焔の決断-6
「水か何かもらってこようか?」
「え〜と……いいや、自分で行く」
「そう、じゃあ先に行くから」
部屋にポツンと残されたエンはポリポリと頬を掻く。
結構あっさりしているラインハルトに拍子抜け。
王様なんだしお相手は選り取り見取なんだろうな、と勝手に納得したエンはベットから出て服を着た。
「へぇ〜キャラのお兄さんって事は王様じゃないかい?」
食堂に行くとエリーがラインハルトとキャラのテーブルに座って話をしていた。
「はい。いつも妹がお世話になってます」
「お世話になってんのはこっちだよぉ」
軽く頭を下げるラインハルトをエリーはバシバシ叩いて大笑いする。
「母さん……」
人の事は言えないが、一国の王に何をしてくれるのか、とエンは顔をひきつらせた。
「あら、おはよう」
「おはようございます、エンさん」
やって来たエンに挨拶をしたエリーとキャラにエンも挨拶を返す。
「おはよぉ〜母さん、キャラ」
『キュア』
「おはよ、アビィ。ちょっと二日酔いだから頭はやめてねぇ〜」
飛んで来たアビィを両手で掴んだエンは、よしよしと頭を撫でてから厨房に入った。
「そうだ、エリーさん。ミヤから手紙を預かってきました」
「ミヤちゃんから?ホントかい?あの子元気にしてるかい?」
「ベルリア導師共々幸せそうですよ」
会話を続けるラインハルトを、エンは水を飲みつつ厨房から眺める。
はて?いくら酔っていたとはいえ男に手を出すとは……そんなにラインハルトはキャラと似ているだろうか?
確かに雰囲気は似ているが、ラインハルトの方が人懐っこい。
間違って襲う程似てはいないし、記憶によるとキャラが部屋を出ていったのはしっかり分かっていたので、キャラと間違えたワケでは無いようだ。
「エンさん、エンさん」
ボケーっと物思いに耽っていたら裏口から声をかけられ現実に戻る。
声をかけてきたのは騎士団員達。