焔の決断-3
「ライン兄さん?!」
キャラは周囲の人間に素性がバレないようにその男を呼ぶ。
「キャラ、元気そうだね」
ニコニコしたままキャラに挨拶をするその男……ラインハルトはキャラに合わせて愛称で呼び、手をヒラヒラと振った。
「何をやってるんですか?!って言うか帰ったんじゃないんですか?!」
ラインハルトをエンの部屋に連れ込んだキャラは、兄を椅子に座らせてまくしたてる。
「いや……私達は転移の魔法陣で来ただろう?」
ドグザールが使った後、ファンの宮廷魔導師ベルリアが改良し、5人ぐらいを安全に転移させる魔法陣を作った。
おかげで安全かつ素早く移動が出来るので滞在を長めにしていたのだ。
「帰る為の魔法陣の準備にまだ少し時間がかかるらしいから、キアルリアの様子を見ておこうと思ってね」
「護衛も連れずに?」
腕を組んで睨むキャラからラインハルトは微妙に視線を反らす。
「どうせ逃げて来たんでしょう?!」
ラインハルトは逃亡が得意。
キャラが護衛してる時もしょっちゅう仕事から逃げていた。
「まあまあ、キャラ。お兄さんだって息抜きは必要だよぉ〜」
エンが間に割って入り、2人に酒の入ったグラスを渡す。
「分かってくれるかい?エンくん。そうなんだよ、王様ってのは色々窮屈でさぁ……観光もろくに出来ないんだよね」
ラインハルトはグラスを受け取り、キャラから隠れるように少しずれた。
「……暫く居ていいです……」
王族が窮屈なのは痛い程分かる。
キャラは今かなり自由なので、自分ばかり自由を謳歌するのも気がひけるのだ。
「ありがとう、キアルリア」
ラインハルトはパアッと顔を輝かせ、キャラの頬にキスした。
「ただし、王様扱いはしません」
キャラはラインハルトを引き剥がしながら忠告する。
「分かってるよ。エンくんもラインでいいからね」
「は〜い。僕の事も呼び捨てでいいですよぉ?」
「分かった。暫くの間よろしく、エン」
「こちらこそ、ライン」
仲良しな2人の様子にキャラはうんざりしながら、そっとため息をついた。