焔の決断-2
「明日来るんだっけ?」
週末になるとアースがこっちに来たり、キャラが城に行ったりの週末婚の2人……今週はアースがこっちに来るハズだ。
「ん〜…今週は来れないかもって……まだ、忙しいみたいです」
ロイヤルウェディングのおかげで警備や何やらで忙しいらしいし、加えてゼビアナンバー2なので何かと呼ばれる事が多い。
キャラもアースの妻として、ファンの姫として忙しかったのだが、あらかた片付いた所で帰ってきたのだ。
こっちが行っても忙しい事には変わりない、と緑色の目を少し曇らせて答えたキャラに、エンは苦笑いしてぐりぐりと彼女の頭を撫でた。
「僕が慰めてあげようかぁ〜?」
「結構です」
キャラはエンにベーと舌を出して、くすぐったそうに笑う。
(可愛いなぁ〜…)
エンにとってキャラは妹のような存在。
確かに魅力は感じるしアースと2人で鳴かせるのは大好きだが……それだけ。
不思議な事に恋愛感情は全くない。
それでも、アースが居ない間は全身全霊をもってこの娘を守ろうと心に誓うエンだった。
『言の葉亭』の営業は夜8時まで。
ぼちぼち客も帰り始めた頃に、その人物はやって来た。
カランカラン
「あ、すみませ〜ん。ラストオーダー……」
入口に向かって声をかけたエンは、入って来た人物を見て絶句する。
「ああ、すまない。またにしよう」
長めの金髪に緑色の目、センスの良い服を着たその男は謝って店を出ようとした。
「ちょぉっと待ったぁ〜!!」
エンは大慌てで男の腰に抱きつき、ズルズルと店の中に引き戻す。
「ははは、冗談だよ。久しぶりだね、エンくん」
エンに引きずられるまま店に戻った男は、ニコニコしながら声をかけた。
「エンさん?」
何だか騒がしいと思ったキャラが裏から顔を覗かせ、エンと一緒に居た男を見た瞬間持っていたコップを落とす。
『キュッ』
アビィは大慌てでそれを空中キャッチして大きく息を吐き、キャラを見上げた。
「ラ……?!兄っ??」
キャラは口をパクパクさせた後、自分を落ち着かせるようにゴクンと空気を飲む。