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ゼビア・ズ・サイドストーリー
【ファンタジー 官能小説】

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焔の決断-17

「ごめ〜ん」

「こっちは何とかしますよ」

 クスクス笑ったキャラは……急に真面目な顔になった。

「ありがとうございます」

「へ?」

「ラインハルト兄様の傍にいるって言ってくれて嬉しいんです」

 キャラはふふふと笑う。

「どんなにオレが許しても兄上は自分を責めるから……あの人はずっと自分を責めて生きるのかなって思って……ちょっと心配だった……だから嬉しい」

 今、自分はとても幸せだからラインハルトにも幸せになってもらいたい、と言うキャラの言葉にエンは少し赤くなって照れた。

「でも……兄上はエンさんの事好きなんですか?」

「ちっちゃ〜い声だったけど好きって言われたし……傍に居て欲しいって言われたから……まあ、はぐらかされたんだけどねぇ……でも、違ってても好きになってもらうから大丈夫〜」

 相変わらずのポジティブ思考……エンならラインハルトをしっかり支えてくれるような気がする。

「お願いしますね」

「任せてよ」

 2人は笑い合って荷物をまとめる。

 魔法陣は大量に魔力を使うし、エンでは使えないのでアビィでファンまで行く事にした。
 次の日の朝、エンとアビィを見送ろうとたくさんの人が集まる。

「着いたら手紙よこしなよ」

「分かった〜」

 皆が見送る中、アースだけは姿を見せなかった。
 ブワリと風を巻いて飛び上がったアビィと、それに乗ったエンにそれぞれが声をかけて手を振る。
 エンも手を振ってそれに答えた。

 暫く飛んでいると朝日に輝く時計塔が見えてくる。
 小さい頃、よくアースと2人で忍びこんで遊んでいた場所だ。

『キュイ』

 アビィがそっちを見ろ、と合図をしたので見てみると……時計塔のてっぺんに黒いコートをたなびかせている男が立っていた。

「……アース」

 アースはエンに向かって拳を突きつけるポーズをする。

「ははっ」

 エンも同じポーズをしてから大きく手を振った。
 アースは、アビィが小さくなって見えなくなるまでずっとそこに立っていた。


 しらっと『言の葉亭』に戻ってきたアースは、椅子に座ってテーブルに突っ伏した。


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