焔の決断-16
「あの……兄上に惚れた……と解釈していいんですか?」
恐る恐る聞いてくるキャラに、エンはニコニコ答えた。
「うん、好き」
答えを聞いたキャラは、ヒイィっと両手を頬に当てる。
「お前はあいつがどんな奴かしらねぇんだよっ」
「キャラを犯した話なら聞いたけどぉ?」
ガタンッ
あっさりと答えられアースは半分椅子からずり落ちた。
「っ知ってて……!?」
「うん、だから傍に居てあげたいなぁ〜って思った。キャラの傍にはアースが居るでしょ?ラインにもそういう人が必要かな〜?ってさ」
「あいつにはギルが居る、わざわざお前が行く事……っ」
バンッ
アースの言葉を遮ってエンがテーブルを両手で叩いた。
「ギルフォードさんにはステラが居るでしょ?ラインには僕が必要なの」
エンはアースを見据え、アースはエンを睨み付ける。
「ここを……捨てるのか?」
「捨てないよ」
捨てるワケじゃない……ただ、離れるだけ。
「ごめんね?」
エンは腕を伸ばしてアースの頭を撫でた。
アースは顔を背けてその手を払い、憮然としてテーブルに肘をついた左手に顎を乗せる。
「勝手にしろ」
「うん、勝手にする〜」
エンは苦笑してその場を離れ、旅の準備をする為に自分の部屋へ行った。
「店はどうなるんです?」
荷物整理を手伝うキャラにエンは答える。
「実は上の姉さんが戻ってくるんだ〜」
エンの姉はとある高級ホテルでコックをしていたのだが、この度妊娠したので旦那共々戻ってくるらしい。
「旦那さんはドアマンだから、それだけじゃ食べて行けないんだってさ〜」
これで『言の葉亭』の跡継ぎ問題は解決。
「……忘れてるかもしれませんが……オレはどうなるんです?」
「……あ……」
リンに追い出され、エンにも見捨てられたら学校で働けない。
「ど、どうしよう?」
オタオタするエンにキャラはプッと吹き出した。
本当にすっかり忘れていたエンは小さくなって謝る。