焔の決断-14
「お、おはよぉ」
「おはよう」
ふあぁっと欠伸をして顔を向けたラインハルトは、挙動不審なエンに笑った。
「思い出したんだ?」
「う……なんかゴメン」
「別に、気持ち良かったし……君の方がダメージ大きいんじゃない?」
自分にとって男性と体の関係を持つのは普通の事だが、エンは違うだろう?とラインハルトは言う。
「それがそうでもないんだよねぇ〜」
あっけらかんとしたエンの答えに、ラインハルトは不思議な顔で瞬きをした。
「逆に未知なる世界に踏み込んでワクワクしてる感じ〜」
あはは〜と笑うエンに嘘偽りは無い。
「君は前向きだね」
「良く言われるぅ〜」
ラインハルトは苦笑して頭を掻き、2度寝をしようと枕に顔を沈めた。
「あっ!ダメだよ〜起きなきゃっ!」
「まだ眠い……寝かせてくれえ」
「ダメだってばぁ!!」
2人してじゃれる声に、外に居たキャラは怪訝な表情でエンの部屋を見上げた。
その日の昼、鬼の形相のアースが騎士団を引き連れて『言の葉亭』にやってきた。
「ラ〜イ〜ン〜ハ〜ル〜ト〜」
昼食をとっていたラインハルト、エン、キャラの3人はビキッと固まる。
「やあ、アース殿……良い天気だね」
ギギギと振り向いたラインハルトは爽やかな笑顔を浮かべて挨拶……その笑顔はかなりひきつっていた……。
アースは黒い髪を逆立て、左しかない金色の目を吊り上げる。
「やあ、じゃねえ!!散々探したんだぞ!!せめて手紙ぐらい残せってんだ!!エン!キャラ!お前らも同犯だあ!!」
アースの雷に3人は小さくなり、ガミガミと怒られグチグチと嫌味を言われ、解放されたのは1時間後だった。
「息抜きは済んだだろ?ファンに戻れ。俺が送ってやる」
大きく息を吐いたアースは腕を組んでラインハルトを睨む。
「分かったよ」
「魔法陣まで一緒に行きます」
渋々立ち上がったラインハルトにキャラは声をかけ、ファンへのお土産を準備する。
ラインハルトはチラッとエンを見て……直ぐに目を反らした。