堕天使のいる部屋-2
「ねぇ、ミッチーさぁ、ちょっと相談があるんだけどォ?」
ショートヘアの小生意気な顔をした女の子が、俺の横に立っていた。
ミッチーというのは、俺のことである。ミチヒロという俺の名前を縮めて呼んでいる。
少々例えが古いが、このコギャル予備軍のような子は、これでもうちのクラスの学級委員をしている。
特に成績がいいわけでも、運動ができるわけでもないが、クラスで目立つ子なのだ。
明るく、よくしゃべり、いろんな流行に詳しいらしい。
そして、その年齢に似つかわしくない妙な色気があった。
サチは宿題のプリントを職員室で受け取り、クラスで配布した後に、何故かまた戻ってきた。
ちょっと狡そうな子狐のような瞳で、俺を見つめている。
詳しくはないが、どこかのキッズ向けファッション誌にでも載ってそうなフリフリのミニスカで、堂々と職員室に入り込んできていた。
「オガワ先生と呼びなさい。それになァ、もう少しその格好なんとかならんのか?」
「ハァ? どこもおかしくないっしょ? これくらいうちのクラスの女子でも他に着てる子いるし? スカートもそんなに短くないしさー」
「短いんだよ。膝が隠れるくらいの、着て来なさい」
「膝とか今時ありえねー。もっとギリギリのあるし。あっ、ミッチーもしかして想像した? うわ、キモッ!」
要するに、俺はなめられていた。
俺はどうも、威厳に欠けるようだ。
まだ3年目の俺が、若造扱いされるのはやむを得ないかもしれない。
体は学生の頃それなりに鍛えていたが、童顔だった。
今でも酒を買おうとすると、身分証明書を要求される事がある。
俺は、いまひとつ教師という風に見えないのである。