王様の嫁取り大作戦-7
「どうゆうつもりだ?」
自分の宿舎に戻ったアースは、シャワールームに居るキャラに声をかけた。
ドグザールをけしかけて国までもを動かそうとしている我が妻が良く分からない。
「ん〜?ゼビアに骨を埋めるつもり」
「なんだそりゃ?」
キャラはシャワールームから顔を覗かせてクスリと笑った。
「ドグが本気だったみたいだしな」
ドグザールと話していて、イズミが姫だからではなく、イズミ自身に惹かれていたのが分かったのだ。
「……それに、アンタは王になる気ないだろ?」
「むいてない」
「オレもそう思う……けど、もし国民投票で王を決めるってなったらアンタが選ばれると思う」
スオウ団長は王に選ばれるには歳を取りすぎている。
アースなら今、教育を受けているしファンの姫のサポートもあるのでうってつけ。
「勘弁してくれ……」
「同感。アンタが王になったらオレも巻き込まれるし……だから、ドグには王座に居座ってもらいたい」
そうは言っても次期国王代理だし、ファンの姫だし……と、どうしても王族と深くかかわる地位に居るので、どうせなら居心地良くしたい……そのための布石……というワケだ。
「さすが、産まれながらの王族だ」
打算的考え方が素晴らしい。
「それ誉めてねえだろ?」
キャラは拗ねた顔でアースに言い返した。
「誉めてる誉めてる。骨を埋めるつもりのゼビアを自分の居心地の良いように裏で操作してるって事だろ?」
「……やっぱり誉めてない……」
その言い方じゃ、まるで自分が腹黒い人間みたいじゃないか、とキャラは益々拗ねる。
いじけてシャワールームに引っ込んでしまったキャラをアースは慌てて追いかけ、ザァザァとお湯が流れている中に居る裸体を抱き締めた。
「嬉しいんだって……そこまで覚悟してくれてる事が」
服ごと全身を濡らしながらアースはキャラの耳元で囁く。
「腹黒でもお前はお前だしな」
「もう!やっぱり腹黒って思ってたんじゃ……っ!」
キャラは腕を振り上げてアースを叩こうとするが、その手はいとも簡単に掴まれてしまった。
暫し絡まる視線……ゆっくりと顔が近づき自然に唇が重なる。
「ふ……んぅ……」
甘い声を漏らすキャラの躰を、掴んだ手ごと壁に押しつけたアースは、パチンと指を鳴らして部屋ごと結界で包み、いじけた妻のご機嫌取りに全力を注ぐのであった。
たっぷりねっとりご機嫌を取った後、アースは部屋を追い出された。
別にご機嫌が直らなかったワケではなく、イズミと魔法の鏡で連絡を取り、探りを入れる為だ。
所在無く城内をうろちょろしていたら、どこからともなくハーモニカの音色が聞こえてくる。
誰が吹いているかは知らないが、夜勤をしているとたまに聴こえるこの音色は耳に優しく、騎士団連中の中で『ハーモニカの君』という呼び名がついて密かなアイドルとなっていた。
何となく音源を探しているとどうやら城の一番高い塔に居るらしい。
魔法で風を操り、音源を追うと更に上の屋根から聞こえてきた。
こんな高い塔の屋根に登ってハーモニカを吹くなんて、どんな酔狂な女だろうかと覗いてみたら……以外な人物が居た。