王様の嫁取り大作戦-5
「ゲハァッ」
ドグザールが力を抜いた瞬間、首に回った腕を掴み軽くしゃがんで足払いをかけた。
前のめりになった勢いを利用してそのまま体を前に倒す。
ぶわりとドグザールの体が浮いて、背中から地面に叩きつけられた。
見事な一本背負い。
「そこまで!!」
アースの声がかかり、訓練場は歓声に包まれた。
「……くっそぉ……また負けたぁ〜…」
ドグザールは大の字になったままゼエゼエと息を切らせている。
何度か手合わせした事があったが、勝った事が無い。
訓練でキャラに勝った事があるのはアースと騎士団長スオウだけ。
今日はドレスのままというハンデがあったにも関わらず勝てないとは……情けない。
「中々でしたよ」
いじけるドグザールを上から見下ろしたキャラは手を差し出す。
ドグザールはそれを下から見上げながら一言。
「下着は黒」
グシャッ
差し出された手はグーになり、ドグザールの顔にめり込んだのであった。
「本気でサイラのイズミ姫を妃に選ぶと?!」
シド爺の大きな声が大広間に響く。
「もう決めた」
腕を組んで答えたドグザールの言葉に、広間に集まった重鎮達がざわめいた。
「しかし……サイラ側は許さないでしょう?」
「そん時は拐いに行く」
「ゼビアを危険に晒すおつもりか?」
「ちょっとだけな」
ちょっとだけで済むだろうか?と全員が疑問に思う。
「具体的にはどうするのですか?」
「一応、サイラ王にお伺いを立てて……ま、ダメだろうから、俺個人でサイラまで行ってくる。その間、こっちはアースに任せっからな」
国をあげて仰々しく行けばサイラもそれなりの対応をするだろうが、個人的に行けばぶっちゃけ隠密に始末するだろう。
「そっだなあ……半年で帰らなかったら死んだって事で……」
「馬ー鹿。ゼビアの人間はなんでこう直情的なんだ?わざわざ死にに行く事はねえだろ?」
ドグザールの言葉を遮ってキャラが発言。
その口調を聞いて重鎮達は驚き、ドグザールとアースは思わず天を仰ぐ。
アースの妻としてゼビアに戻り、城に滞在している間はキアルリア姫として礼儀正しく猫を被って過ごしていた。
騎士団連中はキャラの素顔を知っているが、城内のお偉いさん達は知らなかったのだから驚くのも無理はない。