王様の嫁取り大作戦-2
「おい……せっかくの休みに呼び出されて、嫌々茶ぁ飲みに来てやってんのに嫌味か?コラ?」
シド爺が出ていったのを確認してから姫らしからぬ口調で喋りだしたキャラは、緑色のドレスから覗く足を大きく組んでドグザールを睨んだ。
「悪かったよ……ここんとこ毎日これだ……お前ぇが居れば避けると思ったんだがなぁ」
シド爺の焦る気持ちも分かるが、ここまできたら妥協したくないのだ。
なんとしてでも結婚相手は自分で探したい。
「お前ぇがプロポーズ受けててくれてたらなぁ……」
ファンの姫で武術にも長けており、見た目も申し分ないし、サッパリした性格も好ましい……かなりの良縁だったのに。
「あんたのその打算的な所が嫌いなんだよ」
プロポーズしてきた時は家出中だった……こっちの弱味を握って思い通りにしようとしていたのが見え見え……キャラの事が好きだとか愛しているとかそんなワケではない。
ファンの為になるワケでもないし、他国の道具になるのは真っ平ゴメンだ。
「王族ってのは打算的な生き物なんだよっ。お前ぇだってそうだろうが」
「分かりやす過ぎだって言ってんだよ……犯罪者に犯された傷モノの姫なんて他じゃ貰い手ねえだろうから、こっちで貰ってやる。断ったらバラしちゃうぞ……ってな」
キャラの指摘にドグザールはぐっと詰まる。
「加えてオレは召喚師の素質もあるし?大陸の中心国ファンの姫だし?そりゃあゼビアにとっちゃ良縁だよな」
「ああっ!!もうっ!ホント悪かったってよ!そんなにチクチク苛めるな」
少しでもキャラの嫌がる事をすると何倍にもなって返ってくる。
まったく、恐ろしい姫だ。
「それで?」
満足したキャラはお茶を飲みながら緑色の目でドグザールに問いかけた。
「あ?」
ドグザールは髪と同じ焦茶色の目をキャラに向ける。
「わざわざ私を呼んだのはシド爺から逃げる為だけじゃ無いですよね?」
口調を礼儀正しく戻したキャラの射るような視線にドグザールは怯む。
嘘や誤魔化しは通じない……ドグザールは深く息を吐いて話した。
「……あ〜…お前ぇさ……サイラのイズミと仲良かったよな?」
サイラは東の大陸をまとめている国。
西や南の大陸はたくさんの国が集まって日々国境争いだの何だの落ち着きがないが、東は大陸全部がサイラという一つの国。
「ええ、まあ……まさかイズミ姫を?」
キャラは驚きの表情でドグザールをまじまじと見る。
「やあっぱ、無謀か?」
ドグザールは腕を組んでキャラに伺った。
サイラは広い大陸をひとつにまとめる為に、長い年月をかけて各地の主要貴族と王族が婚姻関係を結び、現在は全ての貴族がサイラ王族と親戚関係……その血脈を絶やさないように王族は国内の貴族と婚姻する事が決まっている。