王様の嫁取り大作戦-15
「王としては大反対だが……父親としてはお前の幸せが一番の望みじゃ」
「お父様」
いつも王として接してきたサイラ王が初めて父親に見えた。
「それに、子供達はまだおるしの」
サイラ王には正妻の他に妾が5人居て、実は子供が全部で15人。
イズミはその上から3番目。
サイラ王の影のあだ名は『絶倫王』だ。
「ほれ、儂の気が変わる前に行け」
背中を押すサイラ王に、イズミは振り向いて抱きついた。
「ありがとう、お父様」
「結婚式にはちゃんと呼んでくれよ?」
「はい」
軽く抱き返したサイラ王に、もう一度力強くしがみついたイズミは、体を離して父親の頬にキスを落とし、バッとテラスの手すりに駆け寄る。
「ちゃんと受け止めなさいよ!!」
「お前ぇがちゃんと飛んだらな!」
手すりに片足を乗せて叫ぶイズミに、ドグザールは満面の笑顔で答えた。
「イズミ姫!?」
「ごめんなさい、デヴィッド様」
イズミはそれだけ言って、思いっきり空中に身を投げた。
「イズミ姫!!」
デヴィッドは仰天して手すりに駆け寄り、空中に手を伸ばす。
デヴィッドの手はイズミのドレスの端を掠め、空をきった。
「ザック!」
『ククッ』
強風に少し流されたイズミを受け止めるべく、ザックは動く。
ドグザールが伸ばした手はがっちりとイズミの腰を掴んで引き寄せた。
「ちゃんと飛べっつったろうが」
「無茶言わないでよ」
2人は言い合いをしながら唇を軽く合わせる。
「それではサイラ王!式は3ヶ月後、ゼビアの城で!お待ちしておりますぞ!」
唇を離したドグザールはサイラ王に言ってザックを海に向かわせた。
飛んで行くザックに乗った2人を見送りながらデヴィッドは大きく息を吐く。
「とんだピエロを演じる事になりましたよ」
「すまんな」
大して悪びれもせず謝ったサイラ王にデヴィッドは笑った。