王様の嫁取り大作戦-12
「大丈夫かい?」
「〜〜〜…あんまり大丈夫じゃあねぇ……」
可笑しそうに聞いてくるベルリアを涙目で睨み、なんとか体を起こした。
「ああ、待ってくれ……まだ出ちゃダメだよ」
ベルリアは軽く手を振って魔法陣を解除する。
魔法陣はポワッと光ってバラバラになって消えた。
「はい、お疲れさま。おかしな所とか無いかい?」
ふらつきつつ立ち上がったドグザールは、屈伸したりぐるぐる腕を回したりして確認する。
横では大型犬サイズ(グロウにとっては一番楽なサイズらしい)のグロウが大きく体を伸ばしていた。
「大丈夫みてぇだ」
痛い所や違和感のある所は無い。
「では、改めて……ようこそおいでくださいました、ゼビアのドグザール王。ファンは貴方を歓迎します」
ベルリアはファンの宮廷魔導師として優雅に挨拶をした。
「突然の訪問にも関わらず対応していただき感謝致しますぞ、ベルリア殿」
ドグザールも王様らしく挨拶を返す。
「まぁ、茶番はこれくらいにしてっと……無茶な事するねえ」
「はっはっはぁ、俺もそう思う」
渇いた笑いを返すドグザールだったが、とても生き生きとしていてベルリアは思わず苦笑した。
「話はキャラから全部聞いてるよ。カイザスも喜んで協力を約束してくれた。丁度、デレクシスが滞在してるから好きに使って良いってさ」
「ありがてぇなぁ……やっぱ人望か?」
冗談を言うドグザールにベルリアは軽く笑う。
「冗談抜きでそうかもしれないよ?今やゼビアも全体陸を形創る国のひとつだからねえ」
ふざけたのに真面目に返されたドグザールは、少し赤くなって頬をポリポリ掻いた。
「ああっと……ラインハルト王に挨拶しねっとな……その後、直ぐにサイラに行けそうか?」
「それなんだけどね……」
ベルリアは困った顔で分厚いカーテンを開ける。
ドシャー ゴオォォォ
窓の外は大嵐だった。
「なんじゃこりゃあぁ!!」
ドグザールの叫び声は、ファンの城内に虚しく響くのであった。
嵐は治まりそうもなく、ドグザールは苛々しながらもファンの城に足止めを食う事になる。
「この嵐は3日は続くと思う」
ファンの漁師であり、水の精霊付きのケイが断言した。