恋していた-5
「いっ…」
「細っせぇ肩。簡単に潰せそー。」
「竹田く、」
「喋んな。」
どんどん力が強くなる。
もう、限界…っ
「…はっ。」
彼の息と共に、肩の圧迫感が消える。
まだじんじんと痛む肩を押さえて、竹田君を見た。
…笑ってる。
「俺のことはどーでもいいの。今は詩織ちゃんの話。ね?」
「う、うん。」
その威圧感に、つい頷く。
「なんで詩織ちゃんは先生とはキスしたの?
二人はまさか付き合ってないよね?」
「付き合って、ないよ。」
何となく下を向いた。
上履きの黒い"畑本"の字が、行儀良く並んでた。
かた、と音がする。
竹田君の足の動きで、彼が正面にある椅子に座ったのが分かった。
「…つーかさぁ、先生セクハラじゃん?ばれたらやばくね?
絶対クビでしょ。」
「え?」
思わぬ話題に驚いて顔を上げる。
「だ、だって、私が勝手にしたことなのに…」
「上の人はそうは思わないよ。」
竹田君がさも残念そうにため息をつく。
「あーあ、先生、前の学校辞めさせられて、やっと馴染んできたところだったのになー。」
その言葉で、自分の心が大きく動揺するのが分かった。
…そっか、そういえば先生は前の学校で…いやいや、嘘かもしれないし。
でも、本当だったら…また先生が苦しむことになるの…?
私の、せいで…。
…先生に迷惑かけるのは、嫌。
「だ、誰にも言わないで。」
「ふーん?でも俺見ちゃったしなぁ。」
「お願い…。」
…少しの間の後。
竹田君はニヤリと笑った。