恋していた-4
「いた…っ」
「ね、俺キスしてたとこ見ちゃった。」
ぎりぎりと掴まれた肩が痛い。
でも、すぐ上から私を見下ろす竹田君の瞳から、視線を逸らせなかった。
あのとき…見られてた?
「な、なんのこと…?」
「とぼけんじゃねぇよ。」
更に強く肩を掴まれる。
一瞬の、刺さるくらい冷たい目。
「…痛いよ。」
「詩織ちゃん、先生とそういう関係なんだ、やらしー。」
「ち、違う。」
「違うの?じゃ、なんでキスしてたわけ?」
「わ、私が、勝手にしただけ。」
「じゃあ俺ともしようよ。」
「え?」
急に接近してくる顔を避ける。
竹田君は意外そうに、少し愉快そうに笑った。
ぞわ、と鳥肌が立つ。
なぜだか、この前よりも嫌だった。触れられたくなかった。
「なんで避けんの?」
「なんでって…だって、そんなの当たり前だよ。」
「当たり前なの?」
「き、キスって、好きな人とするものでしょう?
私は竹田君のこと好きじゃないし、竹田君だって、なんでいつも…
…私のこと好きでもないのに。」
私は、事実を言っただけのつもりだったのに、竹田君が一瞬、息を呑んだ。
「えー…?俺、詩織ちゃんのことめちゃめちゃ好きだよ?」
動揺で目が泳いでる。
やっぱり、そうなんだ。
「違う、と思う。
なんか、上手く言えないけど、違うのわかるの。」
「へー。そりゃ、お見事ですねー。
…俺の安っぽい演技には、全然騙されてなかったってわけか。つか、こいつ鈍いの?どっち?」
上の方を見て、独り言のようにつぶやく。
「なんでそんなに私にこだわるの?」
「別にぃ。ま、タイプだったんじゃん?」
「竹田君、私のこと、誰かと重ねて見ていた気がするんだけど、」
「………あ?」
竹田君の目の色が変わった。
と、思う間もなく掴まれた肩に力が入る。