恋していた-15
「先生、どうしたの…?」
「悪い、悪かった。」
「…え?」
何を言われているのか、分からなかった。
「こんな…」
少しずつ、少しずつ。
先生が私から離れた。
「忘れてくれ、ってわけに、いかないか…参ったな。」
先生の困った顔に、胸がずきずきと音を立てた。
------…なんで、
なんで…?
先生、なんで謝るの?
なんでそんなこと言うの…?
また瞳の奥がツンと痛くなった。
でも…今は、泣いちゃだめだ。
分からないけど、泣いたらダメなときなんだ。
「私、忘れます、全部。
帰ります。さよなら。」
早口で言って、先生の顔を見ずに教室を出た。
廊下を歩く私の靴音が、辺りに響いた。
私は、先生に私の心を知られたくなくて、走らなかった。
校門を出て、駅に向かって歩き始めると、一筋の涙がこぼれた。
すぐに目の前がにじんできて、どんどん涙が落ちていく。
どうしても涙が止まらなかった。
もう先生は近くにいない。
でも私は、絶対に走らなかった。
私に私の心を知られたくなかった。
私を騙していたかった。
悲しくない。
辛くない。
はじめから何もなかったんだから、私は失ってなんかいない。
先生のことなんか…---
どうやっても涙が止まらなかった。
どんなに自分を騙して、誤魔化そうとしても、
先生を好きな気持ちだけは、否定できなかった。
☆END☆