恋していた-14
「ごめんなさ…------」
「------待てよ。」
出ていこうとしたけど、そこから動けなかった。
この、温度。
振り返ると、左腕を掴まれていた。
あの時と、同じ。
でもあの時よりずっと強い力。
見上げると、先生が私をまっすぐ見ていた。
こんな顔した先生は今まで見たことがない。
すごく怖くて、すごく悲しそうだった。
「…何も言わないのは、畑本だろ?」
先生の声が、私の心に響く。
「なんで、俺を避けてたんだ。」
「さ、避けてたわけじゃ…」
言い終わる前に腕を引かれて、私は先生の腕の中にいた。
「お前が何もなかったような顔してたから、忘れた振りしてやったのに…」
先生の低い声が、耳元で響いた。
どくん、と心臓が大きく鳴った瞬間、ぐっと抱きしめられた。
「………!」
…抱きしめられるって、もっと優しいものだと思ってた。
だけど今、私が弱々しく抵抗する度に、先生は更に強く私を包んだ。
苦しい。
でも心臓がどきどきして、止まらなかった。
なんだか心までぎゅっとなって、このまま死んじゃいそう。
先生の左手が、私の耳元にそっと触れる。
先生が私を見つめる。
その瞳が、切なげに揺れた。
…好き、先生が好き…
お互いの唇が近づき、今にも触れそうになったとき…------
「せん、せ…」
私が先生を呼ぶと、はっとしたように動きが止まった。
「……先生?」
先生は少し青ざめた顔で、少しずつ体を離した。
最後に指先が離れるとき、私は咄嗟に先生の手を掴んだ。
だけど、先生の指には全然力が入っていなくて、私はそのままその手を離した。