恋していた-11
「私はね、一つ知りたいことがあったの。」
「知りたい、こと。」
「そう。
先生の方は、お姉ちゃんのことどう思ってたのかなって…。」
気になる。
心の中ですぐに返事をすると、見透かしたような視線が返ってきた。
「私の鋭い洞察力による観察結果、知りたい?」
伊藤さんは、にやりと笑う。
「え、えと…」
聞きたい。
でも、聞いていいの?
「あの、」
私が迷っていると、伊藤さんは大きくため息をついた。
「はぁーあ。ま、いっか。」
わ、やっぱり聞けば良かった。
「私と畑本ちゃんて綺麗に正反対だよね。」
「え?」
伊藤さんが独り言みたいみたいにつぶやいた言葉は、一瞬聞き逃しそうだった。
少し上を向いて、宙を見つめている。
「正反対?」
「私は目的があって先生に近づいて、それを達成させる為に先生を好きな振りをしたけど…畑本ちゃんは目的がある振りをして先生に会ってたでしょ、先生が好きなのに。」
今度こそ、椅子から落ちた。
「な、な、なんで分かるの?」
自分でもこの間気づいたばかりだっていうのに!
伊藤さんは、ものすごい呆れ顔で私を見た。
「あんなにあからさまに何度も会いに行ってれば、普通分かるでしょ。」
「そっ、か。」
顔がどんどん熱くなるのを感じた。
「でも…単純過ぎて伝わらないこともあるんだね。」
「え?」
「君達見てるともどかしいもん。
なんで、先生の気持ちに気づかないの?」
「先生の気持ち、って?」
「…あたしが言うことじゃない、かな」
「そんな…わからないよ。」
困惑する私に、伊藤さんはなぜか優しく笑いかけた。
「なんでこの話を畑本ちゃんにしたかわかる?」
私は、先を促すように伊藤さんを見た。