意味深なことを言う。-9
「……………し、ょう…」
(…ぎこちなっ!)
照れ屋な郁らしくて、おもいっきり口元がほころんでしまった。
ホントはもっともっと呼ばせてみたいけど……
かわいすぎるから合格だ。
『なんか、名まえ呼ばれただけで出そうになっちゃった。』
おどけて言うと、細っこい腕がふんわりと抱きしめてくれた。
リン、と鈴が鳴るように、郁が耳元でささやく。
「…夏目さんの…ください。」
視線だけを動かし郁の顔を見ると、恥らいながらもいつものように笑みをのぞかせていた。
『…いいの?』
郁がピルを服用していることを知ってからも、ゴムは毎回つけていた。
万が一のことがあって彼女の笑顔が損なわれるのはなんとなく嫌だったからだ。
郁も、それで何か言ってくることはなかった。
「私も、全部見たいし知りたいんです。」
“私も”って…
俺はその気もちを、直接口に出して言ったことなんてないのに。
郁には頭の中を見透かされているような気になる。
(…でも悪くないかな、郁なら。)
『郁…キスさせて…』
いつの間にか恒例になっていた、達する前の儀式。
唇を離すと郁の首元に顔をうずめ、最奥を狙った。