returns to one-2
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バイト後帰宅し、電気を点けずに階段を上がった。
重いからだで二階に辿り着くと、一番奥にある部屋から明かりが洩れている。
自室を通り過ぎその部屋の前まで行くと、俺は躊躇せずにドアを開けた。
「……ノックは?」
『…っせーよ。』
ノックもせず部屋に入る俺に、うんざりといった表情の沙也。部屋の奥にある勉強机に腰掛け、ややつり気味のきれいな二重が冷めた目でこちらを見据える。
俺はそんなもの意にも介さず、音をたてて扉を閉めた。
「…とっとと用件言って。」
不機嫌を抑えるような声で姿勢を机に戻し、読んでいた本に視線を戻す沙也。
ドアを背もたれにし、沙也の後頭部を見つめながらゆっくりと口を開いた。
『…颯太とつき合ってんだって?』
「…だから何?あんたには関係ない。」
今度は本から視線を外そうともしない。
俯きがちな後頭部が、その話題をぴしゃりと撥ねつける。
…いつからだったか。コイツは俺の名前を呼ばなくなった。
昔は何をするでも一緒で、姉貴ヅラして俺の後ろを付いてきていたのに。
二人の間にある冷ややかでピリピリとした空気が俺の苛立たせる。
『ふーん…関係ない、ね…』
口を歪ませながら沙也に近づく。
不審に思った沙也がこちらに顔を向ける前に、手首を掴み上げ椅子から無理矢理立ち上がらせた。
沙也の手の中にあった本が音を上げて足元に落ちる。