returns to one-10
『…沙也…!沙也…!』
これが抱いてはいけない感情だってことくらい、とうにわかっている。
それでも、想いをのせて口付けを交わした。
「ンあっ!瑛介ェ…や、ぁあ…―――――あぁあ…!」
『―――っ!…沙也…ッ…!』
沙也はからだを仰け反らせながら一番奥にあるヒクつく扉を開けて、俺は沙也と同じ遺伝子を返した。
愁いを帯びた瞳を見て、泣いているのかと思った。
―――――――――――――――
初めて俺に彼女が出来たのは、高校に入学して間もない頃だ。だけど…
手を握っても、キスしてもセックスしても、拭えない違和感が何度も俺を襲った。
沙也と一緒にいる時のようなぴったりと枠にはまる感じがなかった。
それがどうにも居心地悪くて、結局すぐに別れた。
(俺だって…俺の方が、沙也じゃなきゃ駄目なんだ…)
また離れ離れになるのはもう嫌だ。
達して少しずつ熱が萎んでいっても、からだを寄せ合い脚を絡ませてそれを拒む。
『…沙也…』
沙也はやはりどこか憂いを帯びた笑顔で、ワックスに塗れた俺の髪を愛しそうに指に絡めている。
『友達も親もいらねぇ。だから…沙也、好きって言え。』
ずっと否定し続けていた感情を、もう抑えることは出来なかった。
お前さえいてくれれば、あとはもうどうでもいい。だから側にいてくれ…
だが俺の想いに反して、沙也はいつになく冷静だった。