雨のち三角-1
二階の窓から、外を眺めていた。
ほとんど真っ暗で、ポツンポツンと人家の明かりが見える。
小雨が降る中、虫やカエルの鳴き声がよく聞こえてきた。
郊外の一軒家に、僕達はいる。一人で住むには広すぎる家だろう。
だが、この家に住んでいるのは一人だけだった。僕の親友が住んでいるのだ。
いや、正確に言うと、もう一人住んでいると言っていいのかもしれない。
もう一人というのは、僕のことではない。僕は、彼らに招待されたのだ。
と言っても、もうこの家に何度足を運んだか、分からない。
僕にとっても、もはや別荘のようなものと言えるのかもしれない。
「コップなんていらないだろ? このまま、はじめようぜ。おいケンジ、そこ座れって」
「準備もういいかな、じゃ、カンパ〜イ♪」
タクヤは僕の唯一の親友だ。いや、そういうと、語弊があるな。
もう一人親友はいる。タクヤの横にちょこんと腰掛けている、小柄な女の子。
マコである。彼女もまた、僕の親友だ。少なくとも、僕はそう思っている。
そして、タクヤとマコは、恋人同士である。
二人とは、つい最近の付き合いじゃない。
タクヤとは、小学校から。マコとは中学からいつも一緒だ。そして、今、僕らは大学生。
僕達三人は、何をするにも、いつも一緒にいたのだ。
「……でよ〜、あいつ、なんと昨日告白されててよ〜」
「えー、ウッソ本当に!? ちょっとマジで〜?」
タクヤと僕は、不思議とウマが合った。性格は、まるで正反対だと思う。
彼は言うなれば、即断の武闘派だった。僕は、良く言うと、熟考する慎重派である。
お互いにある時は兄に、ある時は弟になった。
何でも相談し、ケンカも幾度となくした。隠し事も、彼にはしないし、出来なかった。
タクヤもまた、そうなのだと思う。親友と言うより、もはや家族に近かった。
「その告白された相手ってのが、実はニューハーフみたいでさ〜」
「へぇ〜、そういうのってどうなっちゃうんだろうね〜」
だが、このままでいいのだろうかと、最近僕は思い始めていた。
だって、この二人は恋人同士なのだ。それも、もう成人である。
僕は、ここにいて一体どうなるのか。
二人には、二人の世界があり、僕は邪魔するべきじゃない。
二人は邪魔とは言わないだろう。でも僕がいたら、いろいろ、できないではないか。
やはり、身を引くべきなのだ。
もう、随分前から、そういう思いが強くあった。
しかし、そう簡単に関係を清算するには、お互いに長く深く関わりすぎていた。
誰かが欠けてしまうのは、辛すぎるのだ。