甘えるのが下手っぴ。-2
「・・・・・・すみません・・・」
手早く自室から運んできた加湿器をセットする。
同じく用意した小さめのアイスノンをタオルでくるみ、ベッドで横になる郁の熱い脇に置いてやると、泣き出しそうなか細い声で郁がそうつぶやいた。
『いいんだよ、慣れてるから。』
「・・・慣れてる?」
『うち、両親共働きなの。妹がしょっちゅう風邪ひいてたから、看病は自然と身についた。』
妹さんがいるんですね、と微笑む郁。いつものようにやさしい瞳をしているけれど、そこに力はない。
これはこれでかわいいけど・・・でも、やっぱりどこかさみしい。俺は郁の髪を一束つまんで、指の腹で軽くねじった。
『スポーツドリンク、枕元に置いとくからな?なるべく小まめに飲めよ?』
「・・・あ・・・」
立ち上がる俺に、郁が何か言いたげな、不安そうな顔をしていた。
もう一度そばにしゃがみこみ、赤く染まる頬に手をのせる。
『キッチン借りるだけだよ。大丈夫、すぐ側にいるから。』
そう言うと郁はうるんだ瞳で弱く微笑み、目を閉じた。
(・・・そういえば。)
キッチンを借りている最中にふと、妹以外に看病をするのなんてはじめてだと気づく。