あるゲームセンターの風景-1
とあるゲームをしている。
もう何年このシリーズをやり続けているだろうか。
始めた時は、高校生だった。今は、とうに社会人になり7年目になる。
格闘ゲーム。
ゲームセンターに数多くあるゲームの中でも、マニアックなジャンルだろう。
まず操作を覚える、膨大なキャラクターを覚え、その技を覚える、連続技を覚え、戦術を覚える。
どれだけ覚えても、キリがない。操作自体も極めて煩雑だった。
どれだけやりこんでも、自分より強い人間がいた。
格闘ゲームはその名の通り、戦うゲームである。
勝つか、負けるか。実に分かりやすく、殺伐としていた。
そして、俺は、その殺伐さが嫌いではなかった。
学生の時も、そして今も、人間関係に悩み、組織のルールに従う事にストレスを感じた。
ここでは、自由である。
ある時間帯に行けば、見知ったゲーマーがいる。別の時間帯に行けば、また違うゲーマーがいる。
俺は、知っているゲーマーに片言ぐらいの挨拶はしたが、彼らの名も職も知らない。
それでいいし、それが、よかった。
俺から誰かに名を名乗らなければならない事もなかった。
ここは、俺にとって自由な空間だった。