あるゲームセンターの風景-6
数分後、俺は疲れきっていた。
彼女はそれなりに上手くやっていたようだが、俺はさんざんで不格好この上なかった。
だからやりたくないのに。彼女はそれなりに慣れているのか、息も切らしていなかった。
「やっぱり、このスカートじゃ、あんまり動けないですね」
カオルはスカートを上に少し上げて見せた。彼女のむっちりした健康的な太ももが見えたが、俺はまだ息切れしていた。頭をコクコク上下させると、彼女はちょっと呆れたような顔をしてジュースを買いに行き、彼女からお茶を受け取ると、一息ついた。
「ほんとに、他のゲームはされないんですねぇ」
「まあね」
「アベさんは、なんでゲーセンに通ってるんですか?」
「何でって、そりゃゲームする為じゃないのかな」
「でも、こういうのって最近は自宅でも出来るんですよね? ゲーム機買ったりして」
「そうだね、でも、俺はゲーム機を家に持ってないんだ」
「買えば、それで済みそうなのに」
「不思議と、あんまり家ではやる気が出ないんだよ」
「じゃあ、別の目的が何かあるとか」
「たとえば?」
「何か、出会いを求めているとか。彼女を探しているとか」
「うーん、分からないな。それに、あのゲームは女の子でやる人はほとんどいないよ」
「じゃあ、わたしは」
「君みたいのは珍しいよ、それに、元々は君も彼氏に教えてもらったんでしょう?」
「それは、そうですけど。アベさんは、彼女はいないんですか?」
「いないね」
「つくろうとは?」
「さぁ、機会がどこかであればね」
「そう、ですか」
その後、カオルはもうひとつ付き合ってくださいと言い、俺の腕をとって、あるコーナーに連れて行った。プリクラのコーナーだ。
くたびれたサラリーマンの俺とは、無縁のものである。