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ゼビア・ズ・サイドストーリー
【ファンタジー 官能小説】

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双星の魔女の困惑-9

「……ムカつく……」

 唇を離したリンはグロウの襟首を掴んだまま俯いて小さく呟いた。

「……何でほっとくのよ……」

『だって……嫌……なんだろ?』

 キスした途端に逃げたという事は、相当お気に召さ無かったのだろうと考えられる。
 だったら無理矢理ヤルわけにはいかない、とグロウは答えた。

「あ、あんなキス初めてだったんだものっ!!」

『……?……どんな?』

 そんなに下手だったか、と微妙に落ち込むグロウの問いかけにリンはぐっと息をつまらせる。

「……キ……キスだけでイッちゃいそうなっていうか……ドキドキするっていうか……なんか落ち着かないっていうか……」

 上手く伝えられずにモゴモゴ言うリンの様子に、何かに気づいたグロウは片手を口に当てて顔を赤くした。

『おまっ……それ、マジで言ってんのか?!』

 何だか馬鹿にされた気がし、リンは掴んでいた両手を離す。

「悪かったわね!!」

 同時に躰も離そうとしたリンをグロウは慌てて抱き締めた。
 もう逃がさないように……。

「離してよっ!!」

『……ヤダ……』

「なんなのよ、もう……意味分かんない……」

 リンは泣きそうな声でグロウの胸に顔を埋める。
 理解できない自分の感情を持て余して涙が流れた。

『お前、可愛いなぁ〜…』

 ぎゅうっと強く抱きながらグロウはクスクス笑う。

「笑ってんじゃないわよ……ムカつく……」

 人が訳も分からず泣いているというのに、この男は何なのだ。

『ははっ……心して聞けよ?』

「?」

 グロウの胸の鼓動が速くなったのに気づいてリンは不思議な気分になった。

『あのキスには俺の想いが詰まってるからな……リン……お前を愛してる』

「…………嘘?!」

 驚いてグロウを見上げたリンの涙は止まっていた。


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