双星の魔女の困惑-6
『相変わらず綺麗だ』
そろりと肩を撫でたグロウの呟きに、リンは柄にもなく顔を赤らめた。
「……ぅ……?」
いつもなら余裕ぶっこいて「あら、嬉しいわね」ぐらい言うのになんだか調子がでない。
『?なんなんだ?いつもと違うぞ?』
ソワソワと落ち着きの無いリンに、グロウも顔をしかめる。
リンは両手で頬を包み、覗き込んできたグロウを見上げた。
ドクンッ
目が合った瞬間、リンの顔だけでなく躰全体が桜色に染まる。
「ご、ゴメンっ!グロウ……今日はパスっ!!」
『はあ?!』
リンはグロウからワンピースを取り返すと、サッと身に付けて逃げるように部屋を出て行った。
ポツンと残されたグロウは、あんぐりと口を開けて部屋の出入口を見つめる。
『って……どうしてくれんだよっ!このおっ勃った暴れん棒!!』
グロウの魂の叫びは、誰も居ない学校に木霊するのであった。
後日、城から学校に戻ってきたキャラは妙なものを目にする。
不機嫌そうなグロウと落ち着きの無いリンだ。
グロウが不機嫌なのはこの際ほっとくとして、リンの落ち着きの無さが尋常でない。
というか、異常だ。
学長室にいる間は普通……というより元気がない感じで、仕事も上の空。
しかし、講義が終わり、各講師が報告に来るとジリジリと帰りたそうな素振りを見せる。
終いには、仕事をキャラに押し付けてさっさと帰ってしまうのだ。
「何……?あれ?」
3日連続で慣れない仕事を押し付けられたキャラは、必死こいて仕事を片付け、今日こそは文句を言おうと家に帰る。
……が、今日もリンは帰って来ない。
しかも学校でも会えない。
「……何なんだよっ!!もう!!」
結局、それが1週間続き、せっかくアースがこっちに来た日も押し付けられた仕事が終わっておらずアースを巻き込んでの残業となった。
「うぅ……ごめん」
「お前のせいじゃねぇだろ……さっさと片付けてあの馬鹿女捕まえに行くぞ」
流石に元講師のアースが手伝うと早い。
講師現役中も散々手伝わされたのだろう、と思わせる手際の良さだ。
「うっし!!終わり!!」
アースはバンッと資料を机に叩きつけ、窓を大きく開けてジッと外を見る。