双星の魔女の困惑-4
『リンが帰ってくる。テーブルセットしてくれ』
「うん」
食事の準備を始めた2人は、それ以上その話はしなかった。
その週はキャラがアースの所(ゼビアの城)に行く番だった。
学校も基本的に週休2日制なので勿論、リンも休み。
しかし、リンは学校に出てきて授業の予定を考えていた。
『学校に来てたのか』
机に向かって頭を抱えているリンの所に、獣型のグロウが現れる。
しかも、窓から。
『休みなのにご苦労な事で……』
足音を立てずにリンの傍に来たグロウは鼻をひくつかせた。
『相当、溜まってんなぁ』
欲求不満の臭いがプンプンする、と言うグロウをリンはハイヒールで軽く蹴る。
「デリカシーが無いわよ」
『獣にデリカシーを求めるな……欲求不満を仕事で解消しようとすると肌が荒れるぞ?』
「……う……」
それは嫌。
『都合の良い事に、ここに欲求不満を解消してくれる、うってつけの人物が居るんだがな』
足元から見上げるグロウにリンは嫌ぁな顔をする。
「人じゃないじゃない……それに、『今更お前ぇじゃ勃たねぇんだよ』って言ったのはアンタじゃないの」
グロウはお座りの姿勢のまま首を傾げた。
『……!ああっ!言ってたなぁ』
「あんだけ酷い事言っておいて忘れるってどういう神経よ?!結構、傷ついたんだからねっ!!」
リンはグロウを睨みながらコツコツと爪先をぶつける。
『ははっ、悪ぃ悪ぃ。でも、言ったのはアースだしな。俺じゃない』
笑うグロウの言葉にリンは肘をついた片手に顔を乗せて聞いた。
「そこらへん、良く分かんないのよねぇ……アンタ達ってどんな感じなの?」
『ん〜…何て言うか……例えば、演劇とか見ているとするだろ?』
「ええ」
『その主人公に感情移入すると、まるで自分の事のように感じるじゃん?』
ふむふむとリンは頷いた。
『でも、自分だったらこうするのになぁ〜…って思ったりもするだろ?』
「するわね……」
『つまり、アースの中に居ながら、『アースの人生』って演劇を見てた感じだな……自分だけど自分じゃないような……だから、分離した今は完全に別人だな』
グロウの説明にリンは成る程ねぇ、と納得する。