side by 郁 - 普段すました顔の彼は意外と-3
正直・・・毎日の労働で、自分はなぜ歯科衛生士をしているのかわからなくなっている時期だった。
しんどそうな患者さんの表情がいつしか私にまで伝染してしまって、笑顔をつくることにつかれていた。
でも彼は、いつもホッとした顔でお礼を言ってくれる。
(私ね、失いかけていたモチベーションを、夏目さんのおかげで取り戻せたんですよ・・・)
数回に分けて全歯をスケーリング、研磨し診療は終了したが、半年おきに送付する歯科検診の案内状に、彼は律儀に来院をつづけた。
私はその度に心がおどるのを感じたけれど、個人的に話しかけることはなかった。
「ん・・・あぁ・・・っ!夏目さん・・・も・・・っ挿れてください・・・!」
(その人にいま私は、脚をひらいているんだ・・・)
――――――――――――――――――――
もう何度目になるのか、夏目さんからのメール。
文面はいつも似たようなものだった。
“今日時間ある?”
私もそれに合わせ、簡易な受け答えを送信する。
本当はもっと意味のない会話をメールでやり取りしてみたいけど・・・彼の冷淡な文章がそれをいつも憚った。
「んん、あう・・・」
夏目さんの指は、熱は、いつも獰猛だ。
愉しみたいから。
挿れたいから。
精を放出したいから。
セックスにそれがよく現れている。