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ブルースカイ・ブルー
【その他 官能小説】

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ブルースカイ・ブルー-1

吐き気がする。頭が痛い。身体がダルい。カチコチと時を刻む時計の音が頭にガンガン響いて吐き気を増長させる。
今日もまた眠れなかった。いや、性格にいうと眠らなかった。眠るとまた『あの夢』を見てしまうから。
憎くて仕方ない青空が、目に焼き付いて離れない。あの日、あいつを吸い込んでいったあの青空。
もう五日寝てない。青空ばかり目に浮かぶ。白い雲がぽっかりうかぶ青空。見たくもないのに。
今ここで寝てしまえば、この青空からおさらば出来るのだろうか。
それともまた、あの夢を見るのだろうか。あぁ眠い。立ち上がる気力もない。
寝てしまおうか。そうも思う。このまま寝ないで辛いのもアホみたいだ。寝て辛いのもアホみたい。不眠症で死ぬことはないと、何かの本に書いてあったが本当かどうかはわからない。
「み…き…岬…」
ほら、幻聴まで聞こえてくる。嫌だ。リアルなあいつの声。本当に耳元で囁かれているみたい。
「ねぇ…岬…」
幻聴は鳴りやまない。いやだいやだいやだ。やめてよもう。思い出させないで。
「!!?」
頬に、温もり。あたたかい手が触れている、温もり。…何故?どうして?何で頬がこんなにも暖かいの?
「岬…」
幻覚だ。とうとう幻覚まで見るようになってしまったのだ。あのときと同じように、優しく私の頬に触れる手。あのときと同じ微笑み。あのときと同じ声で。
ああ、やっぱり私はまだあいつのことが好きなんだ。
あのときのあいつの声、あいつの背中がリフレインする。
『それじゃ…ね』
次第に遠くなるバイクの音だけを聞いていた。
バカみたい。こんなにあいつに固執するなんて。でも、そうは思っても、私の手は幻覚にのびてゆく。触れることなど出来ないとわかっているのに。
「コウ…」
思わず名前を呟いてしまう。本当にバカだ。私。どうせこれも夢とさして変わらないだろうに。
「岬…」
のばされる私の手を取るかのように、あいつの手ものびる。私の脳が、そうなることを望んでいるのか。
手が、触れそう。
…………消えない。
手が、触れあっている。あたたかい体温が伝わってくる。
今時の幻覚というのはとてもリアルなものだ。そのままあいつは私をぎゅっと抱きしめる。
「凄くあいたかったよ、岬」
温もりで全身が包まれる。これが幻覚なのだろうか?本物みたいだ…。
「本物みたいだよ…?コウ」
思わず呟いた私の台詞に、あいつは少しポカンとした顔をした。しかしその顔はすぐ優しい笑顔となる。
「何言ってるんだよ。俺が俺じゃない訳ないだろ?」
そういって私の髪をなでる。あいつが好きな行為だ。
「戻って来てくれたの?」
「………ああ」
あいつは少し間を置いて、でもはっきりとそう言った。
あいつが私の元へ帰ってきた。一度は置き去りにした私の元へ。嬉しいのか、悔しいのか、気が抜けたのか。私の目からは涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「ごめん。ごめん…岬…」
「バカァ…」
泣きじゃくる私を宥めるように、あいつは背中をさすっている。それでも私は泣きやまない。なんでこんなに涙が出るんだろう。あいつが私を置き去りにしたときは、涙さえでなかったというのに。
あいつは困った顔をしていた。
「泣かないで…」
困り果てたあいつはそっと私の目を見つめると、優しい優しいキスをする。
「ん…」
唇が離れたとき、私の涙は止まっていた。
「岬、本当にごめん。俺だっておまえを置いていきたくなかった。寂しいよ…だから、あいにきたんだ」
そのままあいつは私をベットに横たわらせた。
「こんな岬…見たくなかった。俺のことで苦しんでる岬なんて…」
そういったあいつの顔も苦しそうだった。


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