第2章-3
「私…そんな女じゃ…ありません…」
「うん?何ですか?」
「ですから…峰岸さんが言うような女ではありません」
「では、相手が私だから誘ったんですね?」
「……」
そんなことありません。峰岸さんを誘うだなんて、そんなこと絶対にありません。
でも…
「そうなんですね?」
「…はい」
峰岸さんの口車に乗せられたまま、私は頷くことしかできませんでした…。
「いやぁ、嬉しいですねぇ、奥さんのような美人に誘って頂けるなんて」
私に向けてくる意地の悪そうな薄笑いに、不快感が高まります。
「私もね、離婚してから独り身が長くてねぇ…奥さんもご主人が仕事ばかりで寂しいようですから、これから仲良くしましょうよ…ふふふ…」
最近は家に一人でいる時間が多いことに不満を感じてはいましたが、だからといって、浮気なんてするつもりは全くないし、ましてや目の前にいるこんな男とだなんて、考えられません。しかし、じわじわと確実に峰岸さんのペースに嵌っていくのを感じながら、それを止めることができませんでした。
「どうしました、奥さん…ほら…そんなところに立ってないで、こっちに来て下さいよ」
「あ、あの…昨日のことは、どうか秘密に…」
「ええ、もちろん…私と奥さんの関係は二人だけの秘密ですよ。当然、ご主人にもね…」
「それと…さっきの写真を消してくれますか…」
「写真ね…まあ、それは奥さん次第ではないですかなぁ…まあ、追々相談することとして、奥さん、早くこっちに来なさい」
完全に主導権を握られ、命令口調の峰岸さんに反感を覚えますが、今の私にはそれに抗うことができません。俯いたまま足を進める私。ソファの前まで来ると、手を握られ引き寄せられてしまいます。
「奥さん…本当にいいスタイルですなぁぁ…それにこんなに美人だし、楽しみだ…ふふふ…」
峰岸さんは大柄な肉体を密着させると、ごつごつとして毛深い手をお尻から腰回りに這わせながら、もう片方の手は膝の上で握り締めている私の手を撫で回してきます。峰岸さんの体温、手触り、そして息遣い、その全てに不快感を覚え、それを分かってもらおうと私は避けるように身体をよじらせるのでした。
「ご主人は、今日は出張でしたな…奥さんのこの身体…今日は、じっくり味わわせてもらいますよ…」
しかし、そんな私の様子など意に介さず、峰岸さんは耳元で静かに厭らしく囁きながら、指が私の前開きのセーターのボタンを一つ、一つと外していきます。
「い、いや…」
緩んだ襟元からピンク色のキャミソールが見えそうになって、恥ずかしさの余り、肌蹴たセーターを手で抑えてしまいます。