第1章-3
「どうしました?今日は市田さんの歓迎会も兼ねているのですから、行きましょう」
肩を叩かれ振り向くと、峰岸さんでした。
瞬間、ゾクッと鳥肌が…
(私、やっぱりこの人苦手…)
「さっ、皆さんが待ってますよ」
それでも、峰岸さんに促されるままに懇親会に向う私でした…。
「ハハハ…いやあ、しかし市田さんはお綺麗ですな」
「そうそう、確か奥さんに似た女子アナがいましたな…誰だっけ…?」
「何だ、川上さん、もうボケたのかね」
懇親会は思いのほか和気あいあいとして楽しいものでした。
元々皆さんは社長さんなどをしていた方なので、話が上手で、聞いていて飽きないものばかりでした。
「さっ、さっ、奥さんも遠慮しないで飲んで…」
「あ、はい…いただきます」
それに、結婚して以来こういう場は久しぶりだったせいか、私もついついお酒が進んでしまいました。
「しかし、市田さんのような若い夫婦が高級マンションを買うなんて凄いね。ご主人は何してるの?」
「えぇ…金融関係を…」
「ほう…もしかして、外資系のエリート金融マンていう奴かな?」
「えぇ…まあ…」
「会長〜!会長も金融屋って言ってたけど、会長の会社は儲かってるの?」
「いや〜さっぱりですよ。市田さんのご主人にあやかりたいもんですよ」
そして、あの峰岸さんも皆さんと同じく紳士的で、一方的に嫌悪感を持っていたことが何か申し訳なく思い始めていました。
「では、若い夫婦の前途を祈って…乾杯!」
「乾杯!」
……
……
……
ん……?あれ…?
私の家…
気がつくと、自宅のリビングのソファの上でした。
時間はもう夜中…。
確か、懇親会で乾杯をして…そこから、記憶がありません。
飲みすぎて記憶を失ってしまったようでした。