カオルD-7
(やっぱり寝ちゃうか)
倒れたような姿勢のまま、寝息をたてている。そんな姿に、真由美は同情を禁じ得ない。
学校が終わってのきつい練習。その分、寝るまでの時間が削られてしまうのだから、帰宅後にも余裕がない。
だから、食事中に自分のことが話題にのぼっていたにも関わらず、会話に加わろうとしなった。
(ううん、入る余裕もなかったんだ)
それほど、精根使い果たしたのだと真由美は思った。
(でも、これって…)
薫の寝顔を見つめるうちに、新たな想いが浮かんだ。
──これで、薫を正常に導けるのでは。
バレーを通じて、辛い練習や試合を仲間と共に経験すれば、自ずと友情が芽生え、強いては普通の男の子のようになるのではないか。
少なくとも、今のような“女装”の嗜好は失せるかもしれない。
そう想うと、偶然とはいえ母親の決断は自分の“方法”より遥かに現実的だ。
(でも…)
再び疑念が湧いた。
──普通って、何だろう。
薫が、世の中に害益となることを犯したわけじゃない。ただ、男の子らしくないだけだ。
(わたしは、それを異常なことだと思っている。そして、異常なことだと思いながら、自分の欲求を満たしたいために、さらに推し進めようとしている…)
真由美は薫を見たまま、しばらく佇んでいた。