第3章-9
その言葉に、ミムラは少し驚いた表情で「イ…イエ、最近、あまり息子とは、会話していなくて…、昨日も泊まり込みだったので、連絡していません」
ミムラの慌てた表情に気付いたタケダは、彼の近くへ行き。
「一度、息子さんに、電話して頂けませんか?」と、言う。
「出るか、分かりませんよ…。それに、犯人だとは、決まったわけでは無いですし」
「あんた言ったでしょ。今回の事件は、息子が関わっている可能性があると…。もし…ルイちゃんの救出が遅れたら、全ては、我々全員の責任になるのだぞ。皆、助かる見込みを信じているのに、あんた一人の挙動不審のせいで、事件の全てが左右されるのだぞ」
ミムラは目を閉じて、考えこみ。やがて立ち上げると、ポケットに入れてあったケイタイを取り出す。
「一言良いですか?」
「何だ?」
「仮に、息子が犯人だった場合…、私に手錠を掛けさせて下さい」
「良いだろう」
ミムラは、微笑むと、登録してあるヒロシのケイタイの番号を、署の電話から行う。
数コール鳴り、繋がらないか…と、思った瞬間、ヒロシのケイタイが繋がった。
「もしもし…?」
着信が取れると同時に、音声をスピーカーに繋げた。
「ヒロシか?私だ…父だ。今、何処にいる?」
「お…オヤジ…助けてくれ…。もう…耐えれない…。アイツ...あんなの人のする事じゃない...。ルイちゃんが、かわいそうだ…。早く助けてやってくれ…」
ヒロシが涙を堪えて話す。その言葉に気付いて、アキが捜査本部の室内に入って来た。
「どう言う事だ?お前…あの子と一緒なのか?場所は何処だ?」
「上菊旅館、今は誰も使っていない無人の旅館だ…、俺は今、ヤツと…」
ヒロシが、何か言おうとした瞬間、音声が途切れた。ムラタは、何度かプッシュを繰り返し、自分のケイタイからも、発信を行ったが、通信が途切れた。
「場所は確認出来たか」
「はい。彼の言っていた場所と、ケイタイの着信位置は、一致しています。犯人と思われる人物は、村の中央の山間部にある、上菊旅館にいると思われます」
「どうやら、あんたの息子さんは、事件の容疑者と一緒にいるようだ」
タケダは、中央にあるマイクに向かって捜査員に指揮を送る。
「全捜査員に通達する。誘拐犯と思われる人物は、村の中央部にある上菊旅館付近にいる事が確定した。現場周辺を捜索している捜査員は、直ちに現場へ急行し、容疑者と思われる人物を見付け次第、確保せよ。なお現場には行方不明の女子児童もいる可能性もある。女子児童は身体を負傷している可能性があると思われる。救急隊の出動を命じる」
タケダは、鞄を持って、現場へと向かおうとする。その時、ミムラを見た。彼は蹲って一人考え事をしている様だった。そんな彼を見てタケダは声を掛ける。
「ミムラさん車を用意し、現場へ向かぞ。被害者の子と、君の息子さんを救出するのだ」
「はい」
ミムラは勢い良く返事をする。
「俺も同行させて下さい」
「私も連れって」
アキと、ユウイチが、タケダに近付いて言う。二人の姿を見て、タケダは少し溜息を吐き、「分かった、一緒に行こう」と、返事をする。
〜上菊旅館…
「ウウウ…」
ヒロシは、顔を押さえてうつ伏せに倒れていた。手のひらの隙間から、赤い血がポタポタと垂れ落ちている。その後方に、相手を睨み着ける恐ろしい形相の、オカダの姿があった。
「チ…、余計な事をしやがって、テメエは、ずっとそうやって、地面にへばりついていろ。クソッ、どうやら...他へ行く必要になっちまったな」
オカダは、そう言うと、ヒロシのケイタイを素手で壊し、足で踏み潰す。そのまま、オカダは、旅館に入って行く。
旅館の奥にある客間では、媚薬の効果が消えかかり、理性を取り戻し始めたルイが、ベッドから下りる。歩こうと立ち上がる、身体が少しフラついた。ふと、自分の身体に何か違和感を感じ、スカートの裾を捲り上げると、下半身に、黒いゴムの様な物が股間部分にTの字に巻かれていた。オカダが、自分の意識がない時に、したのだと思い、脱ごうとしたが、脱げない、黒いゴムは、腰から腹部へと繋がっていて、それを辿って行くと、首へと巻かれていた。アゴの下に鍵穴の錠があり、それを外さないと、取れない構造になっていた。
歩くと、股に違和感がある。簡単に取れないように、股に食い込み、しかもワレメ付近に、何か仕込んでいるのは分かった。
足音が聞こえて来た。オカダが戻って来たようだった。ルイは、急いで隠れようとする。背丈が低い身体を利用してルイは、小さな押し入れの中へと潜り込んだ。
ガラッと戸が開く音がする。
「オヤ…ルイちゃん、何処に行ったのかな?クク…そうか、隠れん坊かぁ…ようし、見付けるぞォ」
ルイは、息を殺して奥へと潜り込む。
近くの棚が開いた。オカダは、隣の棚を開きに行く。そして、他の場所を探しに回る。
「この部屋から、出ちゃったのかなァ…?」
オカダは、部屋から離れて足音が遠ざかって行く。ホッと一安心したルイ、ふと自分の股間部分に生暖かいものを感じる。気が付かないうちに失禁をしていた。
散々ワレメを弄られたせいか、陰部が痺れて、アソコの感覚が鈍っていた。黒いゴムが陰部に食い込んでいる為、尿が四方八方に、飛び散ってしまっている。
「ウウ、こんなのヤダ…」
ルイは、辛く涙流した。
オカダが遠ざかって行き、少し時間が経過した。どれだけの時間が経過したかは分からない。ただ…ルイには、相手の気配が無いうちに逃げようと思った。押し入れから顔を出し周囲を見渡す。誰もいないのを確認し、そっと、忍び足で部屋の外へと出る。周辺を見まし、ルイは廊下へと出て行く。