第3章-4
「怖いの…、さっきから、誰かに見られている感じがして…」
「そお…じゃあ、一度家に帰ろうか」アキが言うと、ルイは頷く。
二人は来た道を戻って帰る。二人は手を繋いで歩いて行く。森林に囲まれた涼しい場所、近くに古びた神社のある近くで、ルイは足を止めた。それに気付いたアキは、振り返ってルイを見つめる。
「どうしたの?」
「向こうに止まっている車…」俯いた顔でルイは、遥か前方に小さく見える、黒い車を指して言う。
アキは、目を細めて見る。距離で約100m程離れた位置に、小さく黒い車が見えた。
「ああ…、黒い車が、止まっているわね、…あの車がどうしたの?」
「あの車、私達が家を出てからずっと、私達の後を付けているのよ」
その言葉を聞いてアキは、ドキッとした。背中に冷汗を感じ、少し身震いをした。
「ルイちゃん…、気付いていたんだ…」
その言葉にルイは、首を縦に振る。狙われているのは、多分ルイだと、アキは思い。今、ルイと離れたら、彼女は確実に拐われるだろう…。アキは、ルイの手を強く握りしめた。
「ルイちゃん、走ろう」
「うん」
二人は一斉に駆け出した。出来るだけ遠くに、不審者に見付からない場所まで、息を切らして、炎天下の中、相手が追いつかない様な場所まで…、二人は田舎道を進み、夢中で森林の奥深くへと入って行く。
汗を掻いて、ハアハア…と、息を切らし、二人は大丈夫と確認すると、互いの顔を見て、嬉しそうに微笑む。
「もう…大丈夫だね」
アキは、森林の中から表を見る、不審者らしき車から大分離れた場所まで来たので、安全とそう思って見ていた…その時、
「キャアッ!」
後方から、黄色い悲鳴が聞こえた。アキは、急いで振り返ると、ルイが何者かに捕まえられている。しかも相手は、ルイが着ている衣服のスカートを捲りあげて、ルイの白いショーツと、その下の肌が露出している。相手の手は、下へと伸ばし、ルイの大事な部分を弄っている。
「ヤメテ、ルイを離して!」
アキが、男性に近付こうとした時、後ろから何者かに、スタンガンを当てられ、電気ショックで、アキは意識を失った。
〜現在…
「その後、気付いたら、私一人が現場に取り残されていて、周りを見回したけど、車が消えていました…。私は急いで家に帰り、ママに事情を説明して、自分も自転車で、いろんな場所を探し周りました」
アキの話が終わると、周囲は、シン…と、静まり返っていた。タケダは、目を伏せてムスッとした表情で、何か真剣に考え込んでいる様であった。筆記していた者も、ボイスレコーダーを止めて、ノートにサラサラと、何かを書き込んでいた。
「お嬢ちゃん…」沈黙を続けていた、タケダが、目を開けてアキを見て話し掛ける。
「他に何か見た記憶は、無いのだね」
「はい。教えられるものは、これで全部です」
「そうか…、分かった。他に何か思い出しそうな事や、事件に関する情報があったら、上菊市警察署に連絡してくれ」
タケダは、そう言うと、腰を上げて席を立つ。
それを見ていたミムラと、他の警官達も一緒に山崎家を離れて行く。
〜薄暗い室内…
眠りから目覚めた少女は、記憶に無い場所に自分がいる事に気付くと、身動きしようと身体を動かす。しかし…身体の自由が利かない事に気付き、焦りを感じ始める。
「ンー…ンー…」
何かを叫ぼうとしても、口が開かない。無駄だと分かっていても、何とかして助かりたくて必死にもがく。少女の目に涙が溢れ出てきた。
密室の扉の向こうで、人の話し声が聞こえて来た。どうやら自分以外にも人がいるようであった。少女は、扉の向こうにいる人達が助けて来るのを期待した。
「で…、これからどうするの…ルイちゃんは?」
「そう焦るな…物事には、順序ってものがある。イキナリ突っ込んだりしたら、せっかくの性品に傷がつくだろう。少しずつ解していくんだよ…あれだけ可愛い顔なら、悶える顔も素晴らしいだろう…」
二人の男性と思われる人達が会話している…。彼等の話し声が聞こえた。ルイと言う少女は、身体が震えた。彼等は自分に恥ずかしい事をしようとしている。自分をこんな格好にしているのも、それだ。ルイは、悪夢が訪れる予感がして縮こまった。
(ヤダ…コワイよう…。誰か助けて…アキちゃん。早くきて…。お願い…)
扉が開き、反対側の部屋の明かりが、室内に入り込み、室内が明るくなった。ルイは、扉の向こうに立つ二人の男性を見た。
「おやおや、お姫様が、お目覚めの様ですな」
そう言ってルイの近くへと来た男性の一人は、背丈が高く、眼鏡を掛けていた。ニヤついた表情で、ルイの側へ来ると、彼女の長く伸びた滑らかな髪を掴み上げて、顔を上げさせて、自分の顔に近付けさせる。
「綺麗な顔だ…、あと数年待てば、売れっ子アイドルでもトップクラスで、人気を獲得出来ただろう…まあ、それも今では過去の話に変わるがな…。今日からは、ルイちゃんの友達は、俺達だからな…。これからは、毎日楽しい保健授業をしまくるから…。朝夕24時間、ずっと毎日、気持ち良い思いしてやるからね」
ルイは、震えていた。間違いない…彼等は本気で自分を辱めるつもりだ。ルイには想像出来ない事を彼等はしまくるのだ。
「おいオカダ、あまり変な行為はするなよ」
後ろにいた男性が、話しかける。ルイは、涙目でもう一人の男性を見た。彼は太っていて、以前何処かで見た記憶があった。ハッと、ルイの記憶が蘇った。彼はユウイチ叔父さんの知り合いヒロシと言う名の男性だった。
潤んだ瞳でルイは、ヒロシを見つめる。
ヒロシは、「ウウ…」たじろいだ。ルイの瞳は彼を見て、「どうして私をイジメるの?お願い助けて…」と、そう嘆き掛けているものだと感じた。
「さてと…まずは身体チェックから、始めようか…ルイちゃんの感度がどの位か、調べさせてもらうよ」