第3章-3
しかしアキは、少し表情をしかめて、「今、ママ、兄妹って言わなかったかしら?それって、つまり私が、男の子って意味なの?」
「え…?気のせいよ…、そんな事ある訳ないじゃない」
母は、愛想笑いしながら、ルイの方を見て、「ルイちゃんも、お風呂から出て来て、表情が明るくなって良かったね」
「はい、ご心配かけて、すみませんでした」
頭を下げて一言、お詫びをする。
「ルイちゃんは、笑顔が一番可愛いわ、曇った顔で俯いてたら、皆が心配するから」
「はい、気を付けます」
母は、ルイの側へ行き優しく抱きしめて言う。「辛い時は、私達家族全員の事を思い出してね。私達は、何時でも、どんな事があっても貴女の味方でいるから…」
「うぅ…あり…がと…う」
ルイは、涙を堪えて礼述べる。
「ちょっと、ママ…私には、一度も、そんな風に抱いてくれた事、無いじゃない、ヒイキし過ぎ」
「だってアキは、ちっとや、そっとじゃビクともしないでしょ?鉄球で叩かれても丈夫な貴女と比べて、清楚で慎ましく淑やかなルイちゃんは、傷付き易いから、大事に労わって育てる必要があるのよ」
「何よそれ、まるで人を獣の様に扱って」
「あら、実際…獣みたいでしょ?近所の男子から、恐れられている様だし」
「ウムム…」アキは、頬を顔を膨らませて、反論の言葉を考えていた。
そんな和やかな時間の中、庭先に大きな騒音を立てる音が響いて来た。
何事が起きたのか…と、母とユウイチが表に出ると、庭に見慣れない大きなワンボックスの車が止まっていた。ワンボックスの車は、派手に改造されている車だった。全体をワインレッドに塗装され、鉛色のマフラーがリアから飛び出している。
かなり派手で異様な車の中から父が飛び出して来た。「悪い悪い、遅くなってしまって」
愛想笑いしながら、父は、家族に声を掛ける。
「貴方…、何なの…この車は?」
「あ…これ?代車」
「随分派手な代車ね、これで…どうやって野良仕事の荷を運ぶのよ…」
「そうは言っても、他に車は、無かったのだよ」
「明日、もう一度修理屋に行って、取り替えてもらいなさい」
「はい…」
母の言葉に父は、シュン…と、縮こまった。皆は家に入り、夕食を始める。ルイが、一 人で始めて、訪れた親戚の家…。賑やかな夕食の一時を過ごした、その日の夜…ルイとアキは、同じ部屋で寝る事にした。
扇風機を掛けて同じ布団で寝る二人、外には夏虫達の夜の鳴き声が聞こえる…。古い建物でもあって、網戸が無い為、蚊帳を取り付けた中で寝る事にした。同じ年の二人は、夜の闇の中、身体を抱き合わせて、唇を交わしあった。
ハアハア…と、互いの吐息を感じながら薄い闇の中で、互いの口の中に舌を舐め合う。
「アイドルの子と、こんな事しちゃって良いのかな?」
「分からない、でも…、凄く気持ち良いの…ハアハア…。アキちゃん、もっと私を強く抱きしめて…」
アキは、ルイの股に手を伸ばし、ショートパンツの裾から、ルイの股を弄る、既にルイのショーツは、しんみりとシミが出来ていた。
「ルイちゃん、相変わらず濡らすの早すぎ、まだ、何もしてないうちから、こうだと憧れのリョータ君に抱かれて貰えないぞ」
リョータの名前を聞いた途端、ルイは、赤面して身体をくねらせる。
「ヤダ、もう…何でアキが、リョータ君の事知っているのよ」
「分かるよそれ位、だってルイは、隠すの下手だから…。以前来た時だって、ずっと彼の方ばかり見てたし」
「ウウ…ヤメテ、それ以上言わないで…、恥ずかしい」
ルイは、何も聞こえない様、両手を耳に当てる。
「好きなんでしょ?彼の事、素直に白状しちゃえ、ホラ…言え、言っちまえ、この…」
アキは、ルイの身体を、くすぐり回す。
「ヒャー、ヤメテ、クスっぐったい」
二人が、じゃれあっていると、部屋の戸が開き、母が恐ろしい形相で「コラ!貴女達何時まで起きているの、早く寝なさい!」と、二人を叱り付ける。
母の一喝に驚いた二人は、「ハーイ」と、返事をして布団の中へと潜り込む。
〜当日…朝
朝、ルイとアキは、起きると、居間へと向かう。居間には父と母、ユウイチが食事を済ませ、父は新聞の朝刊を読み、ユウイチは朝のニュース番組を見ていた。後から居間に来た二人は、自分達で御飯をよそい、食台に並べられたオカズに手を伸ばして朝の食事を始める。
午前中、アキは、翌日、自分の家で誕生会を開く予定を立てて、近所の女の子の家に声掛けをすると、ルイに話し、招待する子達の家を周って来ると言った。ルイも、山崎家に居ても夏休みの宿題をやらなければならないので、自分も付いて行く事に決めた。
外出時、ルイはお気に入りの緑色の花柄模様のワンピースの衣服に着替えた。前開きのボタン付きの衣服に着替えた。
近所と言っても、田舎での近所は町中とは違い、隣までの距離が長い。その為、歩いて周るのでは無く、自転車で行く事になる。しかし…ここで重大な問題が発生した。ルイは、自転車に乗れなかった。本人曰く、怖くてダメらしいの事であった。
アキが使っていた、お古の自転車を貸して試しに乗らして見たが、数センチ走る事も出来なかった。アキが乗れるよう練習させる事も出来なく無いが、それで今日の予定を変更するのも偲びない為…、仕方なく、その日は近くの家には歩いて周り、距離のある友達の家には電話での連絡をする事に決めた。
田園地帯が広がる畦道を、二人は進んだ。周囲を山に囲まれた長閑な風景の真夏の空の下、アキの友達の家々を訪ねに行く。何軒かの家を訪ねに周った頃からルイ表情に変化が現れ始めた。少し落ち着きが無くソワソワした雰囲気で周囲を見渡している。
「どうしたのルイちゃん…?」
「私…もう、帰りたい…」
その言葉を聞いたアキが、不思議そうな表情で、ルイを見る。