一部の地域で迷惑-13
「何か買ったのか?」
「ううん、小夜美さんがくれたの。ハーブティーとお菓子」
中身を見た芳郎は瓶に入ったハーブティーを見て璃子の手から紙袋を奪った。
「重いだろ?」
瓶が2つ入っているので軽くは無いはずだ。
「お人好しだねえ」
「素直にありがとうと言え」
「ふふ、ありがと」
穏やかな会話を楽しみつつ、目当ての店に着くと視力を測りコンタクトを注文。
店頭に並んでいる眼鏡を試着しまくる。
「璃子は黒い髪が綺麗だから赤が似合う」
試着した時に鏡越しに笑いかけられ、璃子はドキドキした。
結局、芳郎の見立てで赤いステンフレームの眼鏡を選んだ。
出来上がりは1週間後という事で、支払いだけ済ませて店を出た。
「4時か……いい時間だな。送ってく」
携帯で時間を確認した芳郎は璃子に顔を向ける。
「え?」
野外調教は?とでも言いたげな璃子。
芳郎は頭をガシガシ掻いて、璃子の手を引いて歩き出した。
「芳郎くん?」
「今日は無し」
不機嫌そうに答える芳郎に璃子は俯く。
「ごめんね……」
「あ?」
何故謝る、と芳郎は再び璃子を見た。
「霊気酔いしちゃったから……」
時間がなくなってしまった、という事らしい。
「違う。初めからヤルつもりは無かった」
「?」
少し歩くスピードを落として芳郎は続けた。
「璃子と化学準備室以外で会って、セックス以外の事がしたかった」
芳郎の顔は微妙に赤い。
「それってどういう事か分かるか?」
璃子はきょとんとして芳郎を見上げる。
「鈍感璃子には分かんねえか……」
呆れた芳郎は少し笑うと、後は黙って璃子を家まで送った。
「じゃ、明日な」
「あ……うん。送ってくれてありがと」
芳郎は握っていた手を少し引いて璃子に顔を近づける。
「さっきの答え。俺は璃子が好きだって事だよ」
そして、優しい口付けをして手を離した芳郎は最後にひと言。
「あと、今日の服……似合ってる」
帰っていく芳郎の背中を見ながら、残された璃子は真っ赤な顔で手で口を押さえ、へなへなと座り込んでしまったのだった。