マリッジブルー-4
「ラインハルト王は同性愛者なので結婚出来ない、もちろん子供も出来ない、結果的に世継ぎが出来ない……ってわけで悩みに悩んだラインハルト王は比較的魅力を感じるキアルリアを世継ぎを産む道具にしようとしたわけです」
「それじゃあ……」
「家出の原因はそれ。こんな最悪な理由、話せるわけないでしょう?」
だから黙ってた事は大目に見てやってくれ、とアースは苦笑いして言った。
ステラはバフッとソファーに身を預け、益々ブルーになる。
「姫様はその最悪な事実をアース様にお話しましたのね……」
ギルフォードは話してくれなかった。
「それはキアルリアが当事者だからですよ。ギルフォード殿は部外者だから『双子の兄が妹犯しました』なんて言えませんって」
自分の恥ならまだしも、兄と妹の恥を本人達の了承無しに話せるわけがない……アースの言葉に、なるほどとステラは納得する。
「その時、精神的にも肉体的にもおかしくなったキアルリアを支えたのがギルフォード殿。2人の間に特別な感情が芽生えても不思議じゃないわけです」
2人の結びつきは強い、とアースは語った。
「……わたくしったら……何も知らないで……」
嫉妬という感情など霞んでしまう内容に、ステラは両手を頬に当てて青くなる。
「教えてないんだから知らなくて当然です」
アースはおかわりのお茶を注いで焼き菓子を口に頬張った。
「それと、ステラ姫はご自分が流されてばかりだとおっしゃいますが……キアルリアの方が酷いですよ」
「……それは……ないでしょう?」
あんなに意思が強くて行動的なのに……とステラは言う。
「いやいやいや……グロウから俺らの事は?」
ステラは両手を頬に当てたまま首を横に振った。
アースはキアルリアとの出会いを簡単に話す。
「俺は一目惚れでしたけどね……キアルリアの場合は別に嫌なわけじゃなかったからって感じで……俺らの関係は成り行きで始まってます」
アースが好きだと言い続け、その勢いに流された。
キアルリアが自分の気持ちにハッキリと気づくまでに1ヶ月はかかっている。
「王の子だからお姫様。妾の子だから正妻の子の為の補佐。俺が好きだと言ったから恋人……もし、ラインハルト王がキアルリアにちゃんと話してたら、アイツはラインハルト王と結婚してただろうよ」
礼儀正しい言葉使いが面倒くさくなってきたアースは、普通の喋り方で続ける。
「ラインハルト王のした事は許される事じゃない……だが、皮肉な事にあれが切っ掛けでアイツは初めて自分の意思で行動したんだ……アイツは理由があって、同意を求められ、それなりに納得すれば、自分の気持ちは後回しにしてイエスと答える……ステラは違うだろ?」
話を聞いたステラは、キアルリアのあまりの流され易さに呆気にとられた。