マリッジブルー-3
「グロウ、昔ムカデに轢かれたの覚えてっだろ?」
『そりゃあな』
「あのムカデに乗ってたのコイツだ」
『あのクソガキお前か!?』
「いや、だから全っ然覚えてないんだって……」
そんな話をしながら立ち去るキアルリアとグロウを見送ったアースは、風を操ってステラの居るテラスに飛んできた。
「おはようございます、ステラ姫」
アースは片膝をついてステラの手にキスを落とす。
「おはようございます、アース様……相変わらず仲がよろしいですわね」
少し寂しそうな笑みで挨拶を返すステラにアースは怪訝な顔をした。
「ステラ姫はなんだか憂い顔ですね……美味しいお茶を煎れますから、飲みながら私に話してみませんか?」
アースはステラの手を引いて部屋に戻る。
気持ちが落ち着くハーブティーを煎れたアースは、ステラの話を聞いてふむふむと頷いた。
「アース様にこんな事お話するのもどうかと思いましたが……」
話してから気づいたのだが、『私の婚約者が貴方の恋人の事を愛しているみたいなの』『彼女のほうが、彼の婚約者に相応しいから身を引くわ』と、言っているようなものだ……よく考えればとんでもない。
「いや、構いませんよ……それに、ステラ姫のお気持ちはよぉく分かります」
アースは自分の分のお茶を飲んで苦笑した。
「と、言いますと?」
「私から見たらあの2人は好き合ってるようにしか見えませんからね」
「ですわよね?!」
ステラはテーブルに両手をついて身を乗り出し、その勢いにアースは苦笑いしたまま少し身を引く。
「ステラ姫はキアルリアが家出した理由をご存知で?」
「退屈だから、としか聞いてませんわ」
ラインハルトもギルフォードも恥ずかしくてとてもじゃないけど言えず、キアルリアも自分の口からは言いたくない……グロウとミヤとオーウェンは自分らが言う事ではないと、傍観していたらしい……。
「ぶっちゃけますけどね……キアルリアはラインハルト王に薬を使って犯されました」
「……え?」
あまりの内容に聞き間違えじゃないか、とステラは固まる。