マリッジブルー-11
「……不安にさせてしまって、悪かったね……」
ギルフォードは横向きでうつ伏せているステラの髪を撫で、隠し事をしていた事を謝る。
「いいえ、事情が事情ですもの……仕方ありませんわ……」
ステラは目を閉じて心地良い愛撫を楽しんだ。
「それと……姫様とのお別れは済んだのでしょう?」
ギルフォードは苦笑いしてステラを抱きしめる。
「君は鋭いなぁ……」
「ふふ……女の勘を侮ってはいけませんわ?」
目を開けたステラはギルフォードの緑色の目を見つめた。
「貴方も姫様も惹かれ合っていたのに……姫様は貴方を切り捨て、貴方は姫様を追いかけなかった……その時点で終わりなのに、再会したら燻っていた恋心が再燃しました?」
「うぐ……」
図星をさされたギルフォードに返す言葉はない。
「アース様は誤魔化せたかもしれませんが、わたくしには通じませんわよ?」
確信したのはさっきの2人のやり取りを聞いてからだが……。
射るような視線に耐えきれずにギルフォードは目を反らした。
「反らさないで下さい」
しかし、ステラに両手で顔を挟まれてグイッと戻される。
「それでも貴方を愛してますわ」
真っ直ぐな蒼い視線にギルフォードは吸い込まれて動けなくなった。
「貴方の厳しい態度も、弱い所も全て……姫様の事を好きであっても……んんっ?!」
言葉の途中でギルフォードがステラの唇を塞ぐ。
勿論、自分の唇で。
「んっ……んぅ……」
噛みつくような荒々しい口付けに翻弄されながらも、ゾクゾクと背筋に快感が走った。
「はぁ……ギルフォード様……」
「君は少し誤解している」
頬に唇を移動させて小さく囁く。
「私は2人の女性を同時に愛せる程、器用じゃないよ」
ギルフォードはステラの髪をかきあげて、額にもキスを落とした。
「君のフワフワの赤毛の手触りが好きだ……君の海のような蒼い瞳を……君の……私を包んでくれる華奢な躰を愛している」
「……ギルフォード様……」
ギルフォードの囁きにステラはじわぁっと赤くなった。
「その、赤くなった顔も好きだ」
チュッと音を立てて唇にキスするとギルフォードはステラの瞳を覗き込む。