マリッジブルー-10
「えっと……なんかイロイロとすみません」
飲ませ過ぎたし、余計な知識も教え込んでしまった。
「……アース殿が、ラインとお前の事をステラに話したそうだ……」
キアルリアは一瞬驚いた顔をした後、納得したような表情になる。
「ラインハルト兄様の事まで聞いてたとはね……」
「私達の事も?」
「えぇ、アースから聞いたって……そっちは皆にもバレましたよ……」
「うわぁ……」
キアルリアとギルフォードは、緩やかなステラの嫌がらせに寒気を感じた。
こんな嫌がらせよりもアースのように直球で来てくれた方がまだマシだ。
「兄上がしっかりフォローして下さいよ」
「分かってるよ」
2人は夜の挨拶をして別れ、キアルリアは部屋を出る。
「あ、キアルリア」
急に呼び止められて振り向いたキアルリアに何か飛んできた。
バフッ
両手で受け止めたそれは、やたらと手足の長い可愛くないウサギのぬいぐるみ……。
「返すよ」
2人が寝た朝に、キアルリアがギルフォードの腕に残したぬいぐるみだ。
キアルリアが顔を上げた時には、既にギルフォードは部屋に戻っていた。
「これで完璧終わりだな……」
別に本気で好きだったワケではない……だが……あの夜の事はどうしても忘れる事が出来なかったのも事実。
キアルリアの頬に一筋の涙がこぼれる。
「さよなら、ギルフォード兄様」
ドアに向かって言葉をかけたキアルリアは、涙を拭くと自室に戻って行った。
「さよなら、キアルリア」
ドアにもたれていたギルフォードも小さく声を出す。
アースにはああ言ったが、好きじゃなければいつまでもあのぬいぐるみを大事にとって置くはずがない。
ただ、キアルリアよりも大切な女性に出逢ってしまったから……。
2人の疑似恋愛は完全に幕を閉じた。
ギルフォードはベットに移動し、ステラの横に滑り込む。
「私のステラにむやみに触るな……ですか?」
「ステラ……起きてたのか」
寝ているとばかり思っていたステラは、しっかりと起きていた。