雅江への異常なる執着-8
それから一週間後、雅江は家を出て実家に戻って来た。
七恵は自分の部屋で雅江と話をしていた。肉体関係は伏せておいたが、雅江の元職場に転職し、健太郎が今でも雅江を思っている事を伝えた。
「七恵ちゃんがまさかあの会社に転職してたなんて…。どうしてせっかく凄い会社に入れたのにわざわざ…」
「だからお姉ちゃんが愛してる川田くんの様子を見てる為だよ。女がいないか、遊んでる女はいないか監視する為だってぱ。」
「わざわざ私の為に?」
「そうだよ?私はお姉ちゃんに恩返しがしたかったの。お姉ちゃんの会社で仕事だってちゃんとやってるんだから。あとで川田くんに聞けば分かると思うけど。」
「川田くん…。ねぇ、本当に川田くん、今でも私の事を…?」
「うん。」
「本当に?だって別れ際、割とあっさりしてたから…。」
「そういうのって会えなくなってから気づくんだよ。川田くんもそう言ってたよ?今ではもう会いたくて会いたくて苦しいって。」
「本当に?」
「もう、疑り深いなぁ…。」
七恵は携帯を取り出し電話をかけた。
「あ、川田くん?七恵です。」
「!?」
いきなり電話した七恵に戸惑う。
「お姉ちゃんに代わるね?」
「えっ?」
いきなり手渡されて混乱する。ゆっくりと携帯を耳に当てる。
「もしもし…」
不安そうなか細い声を振り絞る。しかし懐かしい声が聞こえた瞬間、離婚などでよどんでいた気持ちが晴れた気がした。
「雅江…。」
体中の毛穴が開いたかのように心臓が激しく鼓動する。