未開封?-2
しばらくの沈黙。10秒。あるいは1分か。山下は頬を赤らめている。こんな顔をした山下を見るのは初めてだ。山下は次の煙草へ火をつける。一呼吸して煙を吐き出したあと、言葉をつむいだ。
「……この変態」
「コンビニは大学、惣菜パンコーナーは僕の交友関係、買うパンは性の対象、そう考えれば分かりやすいかな」
僕は声のトーンを抑えつぶやく。
「回りくどい。素直にやりたいって言いなさいよ」
「だから開封済みとはしたくない。その理由は山下がさっき言ってくれた」
「……。で、私が、その、開封済みかどうかなんて、君が知ってるわけないでしょっ」
「それを検証したい。服装は男受けしなさそうだが、いい体をしている。山下の20年かそこらの人生の中で、その処女膜は開封され――」
山下の手で口を塞がれる。ついでに鼻も覆われた。息ができない。テーブルを叩いてタップ。
「ふぅー。何をする」
「バカ。昼真っからなんて話してるのよ」
「じゃあ場所を改めよう」