茜と直子-1
「ねぇ、茜ちゃん」
直子は首を捻って茜を振り返った。制服のまま四つん這い。肘を床につけた、尻を掲げるような姿勢だ。スカートを捲った尻に風を感じる。
「なぁに、直子」
茜も同じく四つん這い、首だけでこちらを振り返って答えた。ショートカットの髪。勝ち気なつり目を色っぽく濡らし、照れ臭そうな笑みを浮かべている。
「これ、いつまでやるの?」
直子も眼鏡の奥の瞳を濡らしていた。床に垂れる長い髪を肘から先だけでかきあげる。その間に悩ましげな溜め息をついた。
二人は四つん這いで裸の尻を突き合わせていた。直子は脚を閉じ、その脚を跨ぐように茜は脚を開いている。その二人の尻を、シリコン製の棒が繋いでいた。
「う、ん。分かんない。でももうちょっとやろうよ」
茜はそう答えて、集中するように顔を伏せた。わずかに尻を前後させる動きが直子の尻に伝わる。
直子もうつむき、尻の中の異物感に意識を集中させた。茜が尻を揺らすたびに異物も揺れる。これが気持ち良いのか気持ち悪いのか、よく分からない奇妙な感覚だった。ただ、この行為の変態性に官能的な興奮が高まるのはハッキリと自覚している。
「直子」
呼ばれて、いつの間にか閉じていた目を開ける。呼吸も鼻ではなく、薄く開いた口でしていることに気付いた。知らぬ内に没頭していたのか。
「どうかしたの、茜ちゃん」
それを悟られまいと、努めて冷静な口調で言った。茜は尻を前後に揺らすのに夢中で、直子の様子どころか自分の状態にも気が回らないようだった。荒い呼吸音が直子の耳にまで届いている。
「お尻、力入れてみて」
呼吸の合間、苦しげな茜の声は扇情的だった。
「うん、わかった」
興奮を煽られ、直子も知らず尻を揺らし出しながら、言われた通り尻に力を入れる。先っぽだけのつもりが茜が動くせいでいつの間にか深く入り込んだソレを、ギュッと締め付ける。
茜の尻を揺らす動きが大きくなった。合わせて声が漏れだす。口を閉じているのかくぐもっていたが、媚びるようなその声色は明らかに嬌声だった。
ふぅん、だとか、んはぁ、だとかいう声が可笑しくて、直子は長い髪の奥で声を出さずに笑った。額には汗がにじんでいる。体が火照っているのだ。
「茜ちゃん、可愛い」
思わず口にした。その自身の声も熱を帯びているのがわかる。
「直子、直子、もっと」
喘ぎ喘ぎ言う茜の甘えた声に、直子の胸に熱をともなった痺れが広がる。
「なぁに? 茜」
直子はいたずらっぽく笑った。内側で渦巻き始めた欲望に耐えるように背を丸め額を床につける。茜の尻を懸命に揺らす振動を心地よく感じる。
「もっと、呼んで、私の名前。直子、お願い」
懇願だった。直子は笑みを強くする。楽しかった。茜が愛しくて仕方ない。
「あかね」
呼ぶと、茜が甘く呻いた。茜の揺れる尻が、直子の尻をペタンと叩く。
「あかね、あかね」
呼ぶたびに茜は声を漏らし、尻の動きを大きくしていった。
段々と、茜の声が大きくなる。我を忘れたような様子だった。
「直子、私、変。変になる」
助けを求めるような声を出しながら、茜は動きを止めない。
「良いよ、茜。可愛い。茜」
いつしか直子も尻を大きく動かしていた。二人の尻はくっついたり離れたりを繰り返し、その間にあるシリコン棒も見え隠れを繰り返す。
「直子、好き。大好き」
茜が叫んだ。
「私も、私も好き、茜」
荒い呼吸の合間に直子が答える。
ああああ、と茜が震える嬌声をあげた。直子の尻を叩いていた動きがなくなる。
直子も動きを止めて振り返ると、茜はぐったりと上体を床に落とし深い息をついていた。靴下を履いたままの脚の向こうに、呆けたような目から涙を流し、汗のにじんだ額に髪を張りつかせている顔が見えた。
突き上げられていた茜の尻が、小刻みに震えながら下げられていく。
尻の中にあったものが抜ける感覚に、直子は喘ぎとも溜め息ともつかない声を漏らした。見ると、茜も口を開けて大きく息を吐いていた。
直子の視線に気付いた茜は、髪の張り付いた顔で力無く笑みを浮かべた。
「変になっちゃった」
照れたような口調に、直子も微笑み返す。
「うん、可愛かったよ。茜ちゃん」
そう言ってやると、茜は幸せそうに目を細めて笑った。