弓野七恵を暴く-14
健太郎はじっと見つめながら言った。
「本当にお姉ちゃんが大好きなんだな。」
「うん。だから結婚してから子供が出来なくて悩んでるのを見てるのがつらかった。でも、出来ないんじゃなくて旦那が作りたがらなかったって聞いて心配になってたけど、こればかりは私には何も出来ないから、気分晴らしにご飯食べに行ったりしてたの。でもある時から急に表情が明るくなって、理由を聞いてもなかなか教えてくれなかったの。そしてやっと妊娠して、ますます明るくなるかと思ったら、また何か悩んでる顔をする事が多くなって、心配になってしつこく聞いたら、実は不倫していて、でもその人にはたくさんの寂しさを埋めて貰ったって。会社を辞めて会えなくなるのがつらいって打ち明けてくれたの。その不倫相手が、川田くん。お姉ちゃん言ってた。川田くんのお陰で夫婦間がどんなに寂しくても我慢出来たって。好きで好きでしょうがないって。お姉ちゃん、妊娠してた時、旦那にはずっと浮気してる女がいるって事に気がついて、凄くショックを受けてた。妊娠前に分かってたら、離婚して川田くんとお付き合いしてたのにって後悔してた。でも浮気してたのは自分も一緒。浮気に気づきながらも何も知らないふりを今でもしてる。お姉ちゃん、今ね、凄く離婚したがってる。川田くんと結ばれたくてしょうがないの。でも川田くんの気持ちもあるし、自分には子供もいて、離婚してから川田くんと結ばれなかったら１人で子供を育てていかなきゃならないし、お姉ちゃん、そんな強い人間じゃないの。でも離婚しないまま川田くんの気持ちを確かめるのは、都合が良すぎるからできないって。保険をかけて川田くんに気持ちを伝えるのは失礼だって。だからって別れてから川田くんの気持ちを確かめにいく度胸もない。それで今でも悩んでるの。」
「だから七恵が会社に入って俺の状況を探り、俺が事務員達と関係を持ってたから、七恵が自分の体を犠牲にして翔子や玲華との関係を断ったって事だよな？」
「うん。私が犠牲になって他の女を近づけさせたくなかった。もしお姉ちゃんと川田くんが結ばれて、私がポイされても私は平気だから。お姉ちゃんの為だから…。」
「その姉妹愛には、本当に尊敬するよ。」
心からそう思った。