弓野七恵を暴く-13
「ある日、出先のお姉ちゃんから電話で頼まれてお姉ちゃんの部屋にある書類を探してたの。そうしたらお姉ちゃんが受験した大学からの合否通知書が出てきて、なんとく見たらね…、合格通知だったの。その時初めて知ったの。お姉ちゃんは大学に行けなかったんじゃなくて、行かなかったんだって。その訳はすぐにビンッてきた。お姉ちゃんは私がお姉ちゃんに勝てる道を作ってくれたんだって。親に比べられてたのは知ってたから、自分を犠牲にしてまで私に勝ちを与えてくれたんだって。もう涙が止まらなくて、ギャバで1番になって有頂天になってた自分が情けなくなって、さ。その瞬間、ギャバを辞める決心をしたの。お姉ちゃんがそこまでしてくれたのに、お姉ちゃんが諦めた大学生活を適当に済ます訳にはいかないって。それから一生懸命勉強して、一流企業に就職出来たわ。」
「この会社に来る直前まで働いてたんだよな?」
「うん。私、ギャバ辞める決心つけた時にお姉ちゃんに聞いたの。私の為に大学行かなかったのって。そうしたら、いつも通りに優しい顔して言ってくれたの。『私の世界で一番の妹だよ、七恵は』って。私、それだけで良かった。誰に勝てなくても、一番にならなくてもいいって思った。ただお姉ちゃんの一番の妹になれるんだったらそれでいいって。就職決まった時、お祝いしてくれたお姉ちゃんに頭を撫でられた時、今までのコンプレックスが全部消えたわ。これからずっと親に認めて貰えなくてもいい、お姉ちゃんは私を認めてくれるんだからって。その時決めたの。お姉ちゃんが困ったり悲しんだりした時は、人生をかけて助けるって。私の世界で一番のお姉ちゃんの為なら何でもするって…ね?」
七恵の目は何の陰りもない透き通った目をしていた。