昔の恋人-7
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遠距離時代もこんなことがあった。
俺がダウンして、駆けつけてくれた矢代。
部屋にいるはずの矢代が見当たらず、とりあえず風呂に入った。
風呂から上がって携帯を見ると矢代から電話が入っていて、折り返すと、矢代が泣きながら電話に出た。
「病院にいる。」
ただ、そう一言だけ言われ、意味がわからず病院にいくと、そこには血だらけの矢代がいた。
「香苗っ!」
一目散に駆けつけた。
服は本当に血まみれ。
俺を見ると、矢代も泣きながら俺の胸に飛び込んできた。
わんわん泣く矢代。
体は普通で、どうやら矢代自身が怪我をした訳じゃないとわかった。
落ち着いた所で話を聞く。
すると矢代の口から聞きたくないほど弱弱しい言葉が出てきた。
実は矢代は何週間か前からずっとつけられている気がしていた。
俺が寝ている間に買い物に出かけようと、マンションを出てスーパーに向かっていると、大学の後輩の女の子がいた。
声をかけたら、少し話がしたいと言われ、公園に行ったらしい。
公園に入ると、凄い形相で睨まれ、元カレと別れるように言われたらしい。
さすがに矢代もいきなり意味のわからないことを言われたため、説明を求めた。
すると、その彼女は矢代の元カレと付き合っていたらしく、1ヶ月前に元カレから矢代と戻りたいからと別れを切り出されたらしい。
矢代は元カレとも戻る気はないし、今付き合っている俺とも別れる気はない、
そのことを彼女に伝えた。
彼女は正直に矢代に嫉妬して八つ当たりしたこと、ここ最近ずっと矢代を見張っていたこと、そしてもうすぐ元カレがこの公園にくることを話したらしい。
どうしても、矢代と元カレと3人で話がしたくて、巻き込んでごめんなさいと謝られたと。
何となく気持ちがわかって、一緒に待っていると、すぐ、元カレが来たという。
今付き合っている人がいて、別れる気はないし、やり直す気もないと伝えると、矢代は気を利かせ少し離れた所にいたという。
2人で話していたところ、泣いていた彼女が急に駆け出して、それを元カレがすぐに追いかけたという。
矢代もさすがに追いかけようとベンチから立ったという。
すると、2人が公園から出た瞬間、車がちょうど通りかかった。
矢代はその瞬間をみてしまったらしい。
矢代はすぐに駆けよった。
2人は血まみれで倒れている。
運転手も怪我をしていた。
公園内にいたおばちゃんが救急車を呼んでくれて、
矢代にも、大丈夫と優しい声をかけてくれたらしい。
そのおばちゃんが現場に残ってくれて、矢代は救急車に一緒に乗り込み、今に至るという。
彼女の方はしっかりしていて、ごめんなさいと涙を流していたという。
元カレの方は意識が朦朧としていたらしい。
説明するにつれ、衰弱していく矢代。
俺は抱きしめながら大丈夫と言うことしかできなかった。