昔の恋人-5
〜♪〜♪〜♪
うるせぇ。
そう思い目が覚めた。
頭もさっきほど重たくないし、怠さも大分マシになっている。
着信が止まる。
手をのばし携帯を探る。
画面を見ると12時5分。
メールと着信がある。
窓からの明かりからして、どうも昼らしい。
夜中から12時間寝続けたってことか。
そういえば腹が減ったかも。
メールはガソリンスタンドと矢代からだった。
『午前中出勤するから必要なのあったら帰りによるけど、何かある?』
ありがたい。
まさに矢代様である。
着信も矢代だった。
とりあえず掛け直す。
仕事以外で矢代に電話するなんて久しぶりだ。
『もしもし?』
「悪い。俺。」
『ごめん、寝てたんでしょ?起こしちゃったかな?』
「いや、大丈夫。矢代、今どこ?」
『今スーパーに着いたとこ。私も買い物しなきゃだったから。何か必要なのあったら買っていこうか?』
…。
言ってもいいだろうか。
何となく迷ってしまう。
『…?笹原?大丈夫?』
「お、おう。」
『眠い?大丈夫?切ろうか?』
「いや、なぁ、矢代。」
『何?』
意を決して言おう。
作る元気はない。
「腹減った。」
ー ピンポーン ー
布団から抜け出し、玄関へと向かう。
インターホンを見なくてもわかる、矢代だ。
あれから電話で散々笑われ、それでも矢代は快諾してくれ、家まで来てくれることになった。
その間に熱を計ったら37.1℃。
なかなかの回復ぶり。
ドアを開けるといつもよりラフな格好の矢代がいた。
化粧もいつもと違う。
少し、懐かしい気分になった。
矢代は多分、可愛い部類に入るんだと思う。