双星の魔導師と巫女-9
「っ貴様っ」
カッときた男が手を上げた時……外で少し物音がした。
「チッ……おいっ!どうした?!」
ミヤから目を離さずに男は後方に声をかける。
返事無し……男が痺れを切らして振り向いた瞬間、ミヤは男の顎に頭突きをかました。
ゴッ
「うぎゃっ」
衝撃で男はミヤの髪を離し、思いっきり後ろに倒れる。
「よくやった!!」
入り口から入ってきた男に褒められ、ミヤはくらくらする頭を何とか上げて目を向けた。
「縛!!」
同時に魔法陣が飛んで男を床に拘束する。
輝く長い蜂蜜色の髪が揺れてミヤの目の前に来る……途中、しっかり男を踏みつけたのは見なかった事にしておく。
「ミヤ?」
サラリと流れた髪は優しくミヤの頬に触れた。
「ベ…ルリア様……」
「様はやめてくれって何度も言ってるのに……」
苦笑いしたベルリアはミヤの胸に貼り付いた護符を剥がし、手足を縛っていた縄を解く。
「可哀想に……また、痣になっちゃったね……」
ベルリアは手首を擦りつつ魔力を注ぎ、簡単に治療しながらミヤの顔を覗いた。
ミヤは呆けた顔でベルリアを見ている。
「ミヤ?」
心配になって名前を呼ぶとミヤの表情がくしゃっと崩れた。
「こ…わかった」
「うん……よく頑張ったね……」
ベルリアはミヤの頭を撫でてそのまま自分の胸に抱く。
ぐすぐすと泣くミヤの背中を擦り、抱いている腕に少し……ほんの少しだけ力を入れた。
ミヤに心の中がバレないように……。
人拐いの男達は騎士団に引き渡され、裁きを受けるだろう。
拐われていた少女達も無事に保護され、2、3日の内に自宅に帰れるはずだ。
事情聴取などもあるが今日はもう遅いという事で、ベルリアは学校の使ってない教室を開放し、少女達をそこに泊まらせた。
しかし、不安が治まらない少女達は中々眠れないらしく、ミヤとリンで慰めたり宥めたりとしてやっと眠りについたのは夜中の2時を過ぎていた。
「やっと寝てくれたわねぇ……」
「そうですわね」
『2人共お疲れさま。学長室でお茶でも飲もうか?』
「賛成〜」
少女達を起こさないようにそっと移動した2人は、学長室に入ると大きくため息をついて体の力を抜く。