双星の魔導師と巫女-8
時間を少し戻す。
お喋りをしていて帰りが遅くなってしまったミヤは、家路を急いでいた。
そこで、いつもは通らない裏道に入ってしまったのだ。
この街に慣れてきて油断していたのだろう。
そういう時に限って悪い事とは起こるもので、案の定ミヤの身にも悪い事が起きた。
背後から近寄ってきた何者かが、ミヤの頭に麻袋のようなものを被せてきたのだ。
「ひっ!!」
突然の出来事に息を飲んだミヤの腹に衝撃が走り、あっけなくミヤは気絶してしまった。
気がつくと、ガタガタと揺れる乗り物の中だった。
袋は外されているが後ろで両手を縛られ、足もひとつに括られており、ご丁寧に魔力封じの護符が胸に貼ってある。
(拐われた……のでしょうね……)
周りにも同じ年頃(見た目年齢なので15〜17歳)の少女達が5人程転がされていた。
妙に冷静な自分を不思議に思いつつ、ミヤは状況を把握しようと耳をすませる。
「ここまでくれば大丈夫だな……」
「だが、まだ油断出来ねぇ……ゼビアは魔法大国だからな……」
拐った犯人は2人、会話の内容からしてゼビアの国の人間じゃないようだ。
暫く走るとガタンと乗り物が止まった。
「なあ、味見してもいいよなぁ」
「大事な商品だ。処女はやめておけ」
「おう」
乗り物の入り口が開き、男が1人入ってくる。
ミヤはずりずりと這って行き、少女達を背後に庇った。
「へぇ……お嬢ちゃんが志願者かい?」
男はペロリと唇を舐めてミヤの顎を掴んで上を向かせる。
躰に走る視線がおぞましくてミヤは背筋を震わせた。
「怯える女っていいよな……」
「変態!!」
バシッ
ミヤが罵倒した瞬間、男はミヤの頬を打つ。
男にとっては軽くだったかもしれないが、ミヤは反動で床に倒れ込んだ。
「商品に傷をつけるなっ!!」
「おお、ワリィワリィ……見えねえ所にしとくぜ」
男はそう言ってミヤの腹を蹴り付ける。
「がはっ」
咳き込むミヤの髪を掴んで持ち上げた男は下品な笑いを顔に浮かべた。
「泣けよ……泣いて喚けっ!そういう女を犯すのが良いんだよっ」
「……やはり、ド変態ですわっ」
ミヤは辛辣に言い返して男の顔に唾を吐く。