双星の魔導師と巫女-7
『ベリー?』
リンの呼びかけにベルリアは嫌な予感がする……リンがベルリアをベリーと呼ぶ時はろくな事がない。
「なんだい?」
『んふふ〜ミヤに惚れた?』
心の中が読めるわけでは無いが、110年も共に過ごしていればわかる。
「まあね」
誤魔化しても無駄なのでベルリアはあっさりと白状した。
『どうするの?』
「どうもしないよ」
想いを伝える気は無い、と言うベルリアにリンはため息をつく。
確かにこの体じゃフラれる事間違いなし……他の人間と体を共有しているなど気持ち悪い事この上ない。
もし、分離できたとしてもそれは100年後だ。
その頃にはミヤはファンに戻っているだろうし、そこには恋人だって待っているんだろう……と思う。
自分のせいで彼女に気を使わせて、勉強の邪魔をするわけにはいかない。
『アタシが慰めてあげるわよ』
「……全然、嬉しくないよ」
『可愛くな〜い』
わざとからかって気を紛らわせてくれるリンに感謝しつつ、どうしても踏み切る勇気の出ない自分が嫌いでしょうがなく、ベルリアは自嘲気味に笑った。
それから4年の月日が立ち、ミヤの下宿先の奥さんが3人目の子供を宿した。
お腹も目立ってきて出産間近というのに、ある夜……2つある月がとても綺麗な夜に、息を切らしてベルリアの家に訪ねて来た。
「エリー?!どうしたんだい?!」
ベルリアは慌てて奥さんのエリーを家に入れてソファーに座らせ、水を渡す。
「はっ……ねえ、ミヤちゃん来てない?!帰ってきてないのよ」
「いや、来てないけど……」
ベルリアはそう言って時計に目をやる。
10時すぎ……遅くなる時は必ず連絡を入れるし、ここまで遅くなった事は今まで無かった。
「分かった……エリーは此処にいて、家の物は何でも使っていいから楽にしててくれ。直ぐに誰か寄越すから……いいね?」
ベルリアの言葉にエリーは頷き息を整える。
上着を羽織ったベルリアは学校へ行き、常駐している騎士団に事情を話して捜索してもらう事にした。
それから医務室職員のおばちゃんを叩き起こし、家に居るエリーを頼む。
そして、ベルリアは学校の広場に行って巨大な魔法陣を浮かび上がらせる。
(何かあったら……ただじゃおかない!)
魔法陣が輝きだし、その柄がうねうねと動き出した。